米副大統領候補の討論会が現地時間の4日夜に行われました。民主党のティム・ケイン上院議員VS共和党のインディアナ州知事マイク・ペンス氏の論戦は、予想外に米大統領候補の第1回討論会を彷彿とさせる内容に。ただし司会者の制止を振り切り声を荒げたのは、民主党のケイン候補でした。「カフェインを過剰摂取したパフォーマンス(over-caffeinated performance)」と揶揄される有様です。
ディベート開始早々、ケイン候補はトランプ候補に対する批判をぶつけます。しかし、ペンス候補は挑発に乗りません。米連邦所得税を支払っていなかった疑惑を持ち出した場面では「トランプ候補は20年前に厳しい局面に瀕したが、しかるべく税規制を見事に活用した」と違法性のない節税策だった点を強調。ケイン候補に「上院議員、あなたは税控除を利用したことがないのだろうか」と問い返したものです。また、資産報告書も公表済みだと付け加えることも忘れません。
ロシアをめぐる応酬でも、ケイン候補が素早くトランプ候補の「強いリーダー」発言を持ち出そうがお構いなし。ペンス候補はプーチン露大統領に対し「弱く、いじめる側の指導者だ」と切り捨てたほか、シリア問題に触れ「ロシアがミサイル防衛システムを配備する一方で、米国はロシアとのシリア停戦協議から退いた」と静かに攻撃します。ちなみにロシアの古い諺として「ロシアの熊は死なない、昼寝するだけだ」を紹介し、中東情勢におけるロシアの脅威に触れましたが、実際には存在しないようですね。
CNNと言えば、米大統領候補の第1回討論会でクリントン候補へ軍配を上げていましたよね。ところが今回、CNNは「ペンスの気質が、討論会の夜を制した(Pence’s temperament wins the night)」と伝えます。ラジオの司会を経験した強みを活かし、ケイン候補が矢継ぎ早に繰り広げるトランプ批判をクールに受け流したとも報道。2012年の副大統領候補討論会(ジョン・バイデン米副大統領VSポール・ライアン下院議員)でのバイデン候補を連想させたとも伝えるほどです。
当時、バイデン候補が使った言葉「malarkey」はバズワード化したものです。
トランプ候補が米大統領に就任した場合に備え同候補の入国拒否の署名が集まった英国のBBCですら「トランプ候補が巻き返す希望をつなげた」と評価。また「副大統領候補の唯一の仕事は、大統領候補の流血を止めキャンペーンを再編成すること」であり、それに成功したとの見方を示しました。ペンス候補が2020年の米大統領選を見据えているのであれば、上々の仕上がりだったとの見方も示します。
というわけで、CNNの世論調査結果ではペンス候補が48%に対しケイン候補が42%でペンス候補が勝利しました。他にリベラル寄りのLAタイムズ紙、クリントン候補に支持を表明済みのワシントン・ポスト紙がペンス候補に軍配を上げていました。トランプ候補は9日の第2回討論会を前に、今夜はぐっすり休めることでしょう。
(カバー写真:C-SPAN)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。