いやはや、前週末のトランプ次期大統領は大忙しでしたね。台湾の蔡英文総統からの電話を受け、10分にわたる会談を行うとは、誰が想像したでしょうか。ワシントン・ポスト(WP)紙が独自の情報や台北タイムズ紙の情報を基に伝えたところ、トランプ陣営と台湾側との間で秘密裏に行われ、用意周到に準備されたといいます。しかもWP紙は、トランプ側のアドバイザーが台湾との新たな関係を築く上でトランプ氏が共和党の大統領候補に選出される以前から練っていた計画だったとも指摘。両者の電話会談自体が数週間にわたって用意されたのなら、トランプ氏と習近平主席との「相互の尊重への明確な認識(clear sense of mutual respect)」を確認した電話会談は、一体何だったのでしょうか?
台湾の英総統からの電話会談後、トランプ氏はご覧のツイッターを投稿。
(出所:Twitter)
もちろん、米大統領主席補佐官に指名されたラインス・プリーバス氏とマイク・ペンス次期副大統領は、あくまで「表敬の電話(courtesy call)」に過ぎないと強調しました。「ひとつの中国」の姿勢に、変わりはないとのメッセージを送っています。
トランプ氏の過激な行動に振り回されるべきではないかもしれません。そもそもトランプ氏自身は米大統領選中にメール問題をめぐり、民主党のクリントン候補を特別検査官による調査を通じ刑務所に放り込むと豪語していました。結局、米大統領選後は振り上げた拳を下ろしクリントン前国務長官を訴追する意志を撤回しています。中国を為替操作国と批判し、南シナ海問題についても初めて明確に言及したとはいえ、1979年の米中国交樹立に伴う外交政策の潮目がトランプ政権で変わるのかは、まだ定かではありません。
中国への辛辣なツイッターはこちら。下が第一弾で上に続きます。
(出所:Twitter)
中国側も比較的冷静に対応、王毅外相は台湾こそ批判しつつ米国の長きにわたる”ひとつの中国”の政策は変わらないだろうとのコメントを寄せていました。人民日報傘下のタブロイド紙、グローバル・タイムズ紙ですら葵総統との会談はトランプ氏の「はったり=bluff」と断じている程度であり、ひとまず様子見といったところでしょう。
国外移転企業に35%の関税を課すとのトランプ次期大統領の強面トークも、どこまで本気か怪しいところ。確かに空調大手キャリアについては、次期副大統領であるマイク・ペンス氏が知事を務めるインディアナ州が700万ドルの税控除を与えた結果、メキシコ移転を思いとどまりました。しかし、米7〜9月期GDP改定値で地方政府が下振れしたように大判振る舞いを続けていられるほど地方財政は豊かでもありません。企業や世論の反発は避けられず、共和党内部でもフリーダム・コーカスなど保守系ティーパーティー派が黙っていないでしょう。
国外移転を検討中の企業へ、トランプ氏が喝!一番下から順にご覧下さい。
(出所:Twitter)
一連の予想を超えるアクションが、トランプ次期大統領流の”アート・オブ・ディール”、即ち相手の譲歩を勝ち取る強硬作戦の域を出なければよいのですが。
(カバー写真:Michael Vadon/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年12月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。