おかしな世論調査「新聞は信頼できる」

山田 肇

Forbes日本版に「報道を信じる人が多い国ランキング」という記事が載っていたので、元データを探した。ロイターの研究所が2016年6月に発表した『REUTERS INSTITUTE DIGITAL NEWS REPORT 2016』がそれである。「大体いつでも、大半のニュースを信じることができる。」にYesと回答した割合が掲載されており、フィンランド65%、ポーランド60%、ブラジル58%と続く。日本は43%で、オーストラリア、オーストリア、イタリアとほぼ同率。英国は50%と日本より高く、米国は33%、フランスは32%と低い。

新聞通信調査会が毎年『メディアに関する世論調査』結果を発表している。各メディアへの信頼度を満点は100点、普通は50点で聞いたところ、2016年調査では最高がNHKテレビ70点で、新聞は69点、民放テレビが59点となったという。回答者は報道を比較的信頼しているということになる。調査会は外国調査も実施しており、新聞の信頼度はタイが67点、中国65点、韓国56点、アメリカ56点、フランス52点、イギリス51点と報告されている。

ロイター研究所と新聞通信調査会の調査は別の質問に対する回答であり、結果の表示方法も異なるので単純には比較できないが、調査会のほうが甘い。国の順番も違う。

他に相違はないか調べたところ、ロイターの調査では、情報源としてオンラインメディアを利用している人が75%、SNSが46%、印刷された新聞が25%だった。これに対して、調査会は新聞(朝刊)を全く読まない人は29%に過ぎず、50%は毎日読むとしている。NHKの『国民生活時間調査2015』では、電子版を含め、新聞に平日触れる人は33%となっており、調査会の数値は高すぎる。僕の周辺の人々の生活行動と比べても、調査会は新聞を読む人々に調査したとしか思えない。

新聞通信調査会によれば「情報源として新聞が欠かせない」が49%、「報道の自由は常に保障されるべきだ」と思う人が83%となっている。朝日新聞が慰安婦報道と原発の吉田調書報道を謝罪したのは2014年だが、新聞への信頼度は2013年が71%、14年、15年、16年は69%と、ほとんど変化していない。不思議なことだ。

朝日新聞は10月23日朝刊記事で調査会の調査結果を紹介し、毎日新聞も同日に同様の記事を掲載している。しかし、調査対象が偏っている可能性に何の疑問も挟まず、身内の調査を報道するだけでは、新聞に対する信頼度はこれからますます低下するだろう。