日経電子版に、全クラスでプログラミング教育を実施する小金井市立前原小学校が紹介された。専門家ではなく素人の学級担任がプログラミングを教え、校長は「算数や国語など普通の授業ではなかなか見られない表情」と話している。
僕が気になったのは、3、4年生が二人で1台のパソコンの前に座り話し合いながら学習を進める様子や、1年生が集まり床の上でロボットを動かしている写真である。前原小学校のプログラミング教育は、生徒が互いに協力して学習する協働学習形式で実施されていることがわかる。
生徒が席に整列して座り、学級担任が前に立って説明する学習形式を一斉学習という。Google画像検索で「elementary school in 国名」の画像を探すと、米国でも、スウェーデンでも、オーストラリアでも協働学習の写真が並ぶ。わが国では算数や国語などの普通の授業は一斉学習形式で提供され、内外で明らかに相違がある。
文部科学省が「教育の情報化ビジョン」を策定したのは2011年のことである。「我が国の子どもたちが21世紀の世界において生きていくための基礎となる力を形成する」ために、今までの一斉学習に加えて、協働学習や、生徒一人ひとりが自分のペースで学ぶ個別学習を進めると書かれていた。
一斉学習は量産工場で働く工員を育てるのに役立つ。学級担任が教えたとおりに試験で回答すれば丸がもらえるのは、指示されたとおりに部品を取り付けられるようになるための訓練でもある。授業に飽きて教室内を歩き回ると叱られるのも、工場でずっと作業を続けるための練習になる。
しかし、日本はもはや大量生産で稼ぐ国ではなくなっている。小学校段階から基礎的・基本的な知識・技能の習得に加えて、思考力・判断力・表現力などを育て、創造性に富んだ人材を育成する必要があるのだ。前原小学校の記事はプログラミング教育を中心に据えた記事なのだが、「教育の情報化ビジョン」の提唱した協働学習が実践されている点が印象深かった。