先日、厚労大臣が省庁で初めてイクボス宣言し、それは若手官僚が提案したことから始まった、という記事を書きました。
・大臣初!霞ヶ関初!強制労働省と揶揄される厚生労働省大臣がイクボス宣言!– Y!ニュース
【突発パパ会という「ゲリラ戦」】
その若手達が、今度は突如仕事を1日休み、子ども達を厚労省に連れてくる「パパ会」というゲリラ活動を仕掛けた、というニュースが昨日飛び込んできました。
・広がれ“イクメンの輪” 同じ悩み抱えるパパが集結(JNNニュース)
正直、厚労省の若手について、彼ら自身の権限は小さいものでしかありません。普通は、とても超巨大組織厚労省を変えられる力はありません。しかし、ゲリラ戦によって世間の耳目を集め、社会の力を借りて組織を外から揺さぶり、改革して行くという戦法は、大きな可能性を持っています。
コミットメントと評価システム改革
これがゲリラ戦である証拠に、パパ会をやるだけでなく、ちゃっかり(予算ゼロ感がムンムンに漂いつつ、魂こもってる)動画を作って、人事制度の見直しを組織に迫っているのです。
動画を見れば分かるのですが、上司の人事評価の中に、部下に育児休業を勧めたかどうかを入れることや、育休が将来の昇給や昇格に影響しないことを職員向けのパンフレットに書き込むことをやってくれ、と。
パンフに書き込むということは「コミットメント」ですし、評価をいじる、というのはインセンティブの変更です。地味なように見えて、じわじわ文化を変えることに繋がっていきます。
そして、この動画にある提言は若手から厚労省のトップに提出され、橋本副大臣、堀内政務官、馬場政務官の上層部3名がしっかりと受け取りました。組織としても割と本気で提言を実行しようという現れです。
広がるか、イクボス宣言
さらに、そんな若手の意気をくんで、橋本岳厚労省副大臣が、他の省庁の副大臣に対し、「おたくんところもやろうよ。イクボス宣言」とけしかけ始めました。
これはスゴい。若手も頑張ってるけど、上司もそれを受けて、自分のところを変えていくだけでなく、むしろ自分達が政府全体の改革の旗手になっていこうとしているわけです。強制労働省と揶揄され、労基署持ってくるくせに、自分たちが全く労基法守ってないダメ集団だった厚労省が、働き方改革のトップリーダーに(ひょっとしたら)なりつつあるわけです。
「末端」による変革の狼煙をあげろ
多くの国民は、こうした官僚の動きを
「とかいっちゃって、やってるフリでしょ・・・」
「安定の公務員だからでしょ」
と冷ややかに見てるだろうと思います。
しかし、組織にいる力なき若手が、「組織を変える」という一見無理ゲーなことをやるにあたって、彼らほど参考になる事例もないのではないかと思います。
今、しょうもない昭和の働き方をしている大企業にお勤めの20代・30代の皆さん。ブラック企業はとっとと辞めちまいましょう。でも、辞めるほどじゃないけど、変わらないかなぁ、変わったら良いなぁと思っているのであれば、「変える」挑戦をしても良いかもしれません。
いまだに出退勤管理を、教室にあった黒い紐でとじた出席簿にハンコ押させるような、タイムマシーンの実物みたいな組織の厚労省の若手が、絶望せずに闘っているんです。
各地でレジスタンスの火をあげていきましょう。ブラック労働帝国軍を、新たな働き方のレジスタンスが、ゲリラ戦で打ち破っていくのです。
頑張れ、厚労省若手官僚。頑張れ、日本の若者達。新たな働き方の夜明けのために、立ち上がろう。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年1月20日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。