今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、こんな署名サイトを見かけました。
「8時間の労働だけで人間らしく生活できる社会にしよう」という趣旨のようです。素晴らしいですね。現在はそういうワークスタイルを実現できている一人として、筆者も全面的に賛同します。
というわけで、微力ながら「8時間で帰宅出来て時間当たりの賃金も引き上げる方法」をアドバイスしておきましょう。
8時間で帰宅するために最低限やるべきこと
1.残業時間に上限を作り、解雇規制も緩和する
8時間で帰れるようにするにはどうするべきかと問われ「8時間以上働いちゃいけないという法律を作る」なんて脊髄反射的に答えていいのは小学生までです。どんな課題にも必ず因果関係がありそれを踏まえた上で対案を出すことが社会人には求められます。
日本の労働時間が長い理由は以前に書いた通り。要するに雇用調整を雇用者数ではなく残業時間で調整しているので長時間労働が慢性化しやすいためですね。なので、残業時間に上限を作るのは賛成ですが、合わせて解雇規制も緩和して採用コストを引き下げることが不可欠です。たまに「とにかく残業上限を厳しくさせろ」しか言わない変な人もいますけど、それだけだとサービス残業が増えるだけなのでやらない方がまだマシですね。
2.残業代に頼らなくてもよいように、ホワイトカラーエグゼンプションを実現する
「生活のために、長時間残業をしないといけないから時給を引き上げないといけない」は全くその通り。そのためには、一定の専門性と裁量のあるホワイトカラーは時給管理を外して成果に対して報酬を支払うようにするしかありません。すると、会社は残業代の原資を基本給なりボーナスなりにふりわける→労働者は長時間残業するインセンティブがなくなるので短時間に効率的に働くようになる→8時間で帰宅出来て時給当たり賃金も上がることになります。
さて、野党に民進党というセンセイがたがおられます。この人たちは基本的に難しいことはあんまり考えてなくて、とりあえず「政府のやることには反対」という基本スタンスです。なのでホワイトカラーエグゼンプション議論の際には「時給管理を外すと残業が増えるからダメだ!」と反対し、長時間残業抑制のために上限を作ろうとすると「そんなんじゃ全然甘すぎる!もっと残業上限を低く設定しろ!」と反対しておられます。時給管理のまま残業抑えるってたんに減収になるだけなんですが(苦笑)
日経新聞さんなんかは早速今期の実質賃金下振れ要因として残業減を上げています。
実質賃金、先行き懸念 昨年0.7%増、5年ぶりプラス 残業減や米政権がリスクに
二兎を追うものなんとやらで、残業手当がっつり確保と残業時間減は両方実現することはできないということです。
3.その上で、自分でしっかり努力する
そして、最も重要なのは、各自でしっかり努力することです。残業に上限が出来れば、会社は繁忙期になったら人を雇ってくれるでしょう。でも、暇になったら誰かが解雇されるわけですから、その対象にならないように一生懸命努力しないといけません。
ホワイトカラーとして残業手当以上の賃金を手にするには、常に高い成果を意識しないといけません。楽ちんなルーチンワークだけやって定時で返って高賃金なんて幻想は捨ててください。
最低賃金もそうですね。筆者はいずれ(東京は)最賃1500円になると見ていますが、それは見方を変えれば、時給1500円分の頑張りを要求されるようになるということです。
以上の3点をバランスよく実現できるなら、「8時間労働で帰宅できて、なおかつ十分な生活水準を送れるだけの収入も確保できる社会」は十分実現可能だろうというのが筆者の意見です。
以降、
8時間で帰れない本当の理由
現状の枠組みの中で8時間で帰る方法
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2017年2月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。