3月23日、衆参両院予算委員会で、森友学園理事長の籠池泰典さんの証人喚問があった。
籠池さんは、大阪の国有地払下げ問題で渦中の人物だ。この問題の土地の価格だが、鑑定価格は9億5600万円だった。そこから、「ゴミ撤去費」として約8億円を差し引いて、1億3400万円になったという。これには籠池さんも、「びっくりした」「神風が吹いた」と語っている。土地の価格が安くなったばかりではない。10年間の定期借地権として契約できてもいたのだ。
先日も書いたが、やはりこの問題は大騒動になってきた。籠池さんは、首相夫人の安倍昭恵さんから、「安倍晋三から」の寄付金として、100万円を受け取ったと証人喚問で証言していた。昭恵さんは、これを否定している。ただし、寄付金自体は違法ではない。
さらに籠池さんは、10年の定期借地権を50年に延長できないか、昭恵さんに依頼したと述べた。ただし、総理夫人付の政府職員から、「ご希望に沿うことはできない」という返事をファックスでもらったという。このファックスも公開された。
籠池さんは、この国有地の問題で相談したという政治家の名前を次々と口にしている。自民党の参議院議員、柳本卓治さん、日本維新の会の参議院議員、東徹彦さん、大阪府知事の松井一郎さん……。ただし、籠池さんは、あまり影響のない政治家の名前しか出していない。
自民党ははじめ、籠池さんの参考人招致を拒んでいた。これは籠池さんの証言で、大物の名前が出るのを怖がったからだ。あえて今回、籠池さんは「大物の名前」を出さなかったのではないか、と僕は思う。つまり、隠し玉として持っているのだと。彼は戦略的で、何か計算してるんじゃないかと、僕は感じるのだ。
僕が大きな問題だと思うことがある。民間人である籠池さんが証人喚問であるのにかかわらず、24日の2人の財務省官僚、迫田英典国税庁長官と武内良樹国際局長は、嘘をついても罰せられない。「証人喚問」ではなく「参考人招致」だからだ。これでいいのか。さらにいえば、当事者である昭恵さんも証人喚問すべきではないかと思う。
籠池さんは、国や大阪府などに対して、3通の異なる建設費を、使い分けて申請している。これは私文書偽造、あるいは詐欺罪に問われる可能性が高い。僕は、近いうちに籠池さんの逮捕もあり得ると見ている。
それにしてもリクルート事件、ロッキード事件など、過去にもさまざまな事件があった。こうした事件が起きたとき、かつての自民党であれば、党内での調査、究明を行おうという動きがあった。党のなかに派閥があり、自浄作用が働いたのである。
いまの自民党には、その力がもうない。みんな安倍カラー一色になっている。「バスに乗り遅れるな」だ。やはり、そのすべての元凶は、小選挙区制ではないか、とぼくは思っている。多様な考えの議員が共存できる、中選挙区制に戻すべきでないか。今回の問題で、僕は思いを強くした。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2017年4月3日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。