「TOKYO2020アクセシビリティ・ガイドライン」に漏れがある

国際空港協議会(AIC)という世界各国の国際空港管理者が集まる団体がある。AICは各空港の旅客数・貨物取扱量などの統計を発表し、サービス状況について調査して空港ランキングを公表することで知られている。AICの欧州地域事務所AIC-Eは、昨年から空港のアクセシビリティについて表彰制度を設け、初回はアイルランドのダブリン空港がAccessible Airport Awardを受賞した。

AIC-Eと共に選考にあたった欧州障害者連盟のサイトに評価基準が公表されている。一点目は「空港までの公共交通機関(タクシー、バス、電車、地下鉄など)はアクセシビリティに配慮しており、そのことがしっかり表示されているか?」である。AIC-Eらは空港内のアクセシビリティだけを評価するという考え方を取っていない。空港は離れ小島のように孤立しているわけではなく、人々はそれを利用するために訪問するのだから、評価はそこから始まる。

東京オリンピック・パラリンピックを目指して『Tokyo 2020アクセシビリティ・ガイドライン』が3月24日に組織委員会から公表された。競技施設・ホテル・公共交通が配慮すべきポイントが列挙されたガイドラインである。しかし抜けがある。観客は東京に滞在し、食事をとり、観光地に出かける。レストランやエンタテイメント施設、神社仏閣などもアクセシビリティに配慮していなければ、本当の「おもてなし」にはならない。AIC-Eが空港へのアクセスについても評価したように。

AIC-Eの表彰制度は、障害者だけでなく、移動能力が低下した人々に対する配慮を評価する。老化と共に歩行が遅くなったなど移動能力が低下した人々は、障害者と認定されているわけではない。しかし、彼らに対する配慮が空港では必要不可欠である。オリンピック・パラリンピックでは外国人の観客が多く見込まれ、日本語がわからない彼らへの配慮が不可欠である。しかし、ガイドラインにはこれに関する言及が、競技施設の客席表示が外国人にも認知できるように、という一言しかない。外国人の観客は日本人よりも長く東京に滞在し、お金も使うだろう。彼らが満足して帰国するように、競技施設・ホテル・公共交通からレストラン・エンタテイメント施設・神社仏閣まで、わかりやすい英語で案内を表示する配慮が求められる。

東京オリンピック・パラリンピックの評価が世界で高まるためには、東京全体を障害者や外国人に配慮した街にしなければならない。この問題については、東京都議会総務委員会で上田令子都議会議員も質問されている。国際派の小池東京都知事にぜひ取り組んでもらいたい施策である。