欧州中央銀行(ECB)が6月の政策理事会で、金融緩和策の解除に向け文言の変更を検討していることが、関係筋の話で分かったとロイターが伝えた。見通しに対する下方リスク、追加利下げや資産買い入れ拡大の可能性に関する文言の一部、またはすべてを削除することが検討されているという。
先日のフランス大統領選挙の結果、EU懐疑派の2人が決選投票に残るという最悪のシナリオは回避された。5月の決選投票でもマクロン氏有利とみられており、マクロン氏がフランス大統領となればユーロにとって大きなリスクが後退することになる。ECBは5月のフランス大統領選挙の結果を確認した上で、これまでの緩和に傾斜していた政策にブレーキを掛ける可能性が出てきた。
これで緩和政策からの方向転換をするわけではない。緩和政策のスピードを緩め、ブレーキを掛けて止まった上で、方向転換の可能性を探ることになろう。それにはファンダメンタルの裏付けも必要となる。英国のEU離脱に伴う影響なども考える必要はあろう。それでも今後も景気の改善がみられ、物価もECBの想定する目標値近辺にあるならば、非常時の金融緩和を続ける必要はない。むしろそれによる副作用を心配する必要がある。
ECBの緩和政策にいきなり急ブレーキを掛けるとなれば、市場に大きな影響を与える懸念がある。このため文言変更ですらもかなり神経を使っていることが伺える。
この修正そのものは間違ってはいないと思うが、ひとつ問題がある。果たして文言の変更を検討していると示唆した関係者が誰かということである。ドラギ総裁に近い人物であれば問題はないが、ドイツ関係者となるとやや懐疑的な見方も必要になる。
ドイツのショイブレ独財務相は4月20日に、ECBがFRBに倣い、金融緩和策の解除に着手することは悪い考えではないとの見解を示していた(ブルームバーグ)。これに対しドラギ総裁は金融緩和策の解除にはかなり慎重とみられている。
それでもECBが緩和政策にブレーキを掛けることは可能性としてはありうる。今月27日の政策理事会で出口議論を行ってくる可能性も指摘されている。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。