地方大学の疲弊と文部科学行政の課題についていくつか記事を書いてきた。「地方国立大学の教員定員削減とアカハラ」では、新潟大学が教員定員の削減に動き出したと紹介した。新潟日報の5月2日付続報は、教員人件費の削減が教育研究評議会で承認されたと伝えている。地方大学が危険な状態にあることが読み取れる。
文部科学省が大学・学部の新増設に制限をかけてこなかったことが、地方大学問題の原因の一つである。記事「文部科学省の誤りを経済財政諮問会議が正す」に書いたように、経済財政諮問会議も是正に動き出した。
そのような折、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会で5月10日に大学教育が議論された。財務省から提出された資料は高等教育の問題をきびしく指摘している。
私立大学の約45%が定員割れしている現状は、進学する魅力に乏しい大学が存在しているためではないのか。そのような大学の卒業生には奨学金延滞率が高い傾向があり、大学の教育・人材育成方法を検証する必要があるのではないか。今後18歳人口のさらなる減少に伴って数年以内に入学総定員割れが見込まれる中では、大学数・定員数の見直しや教育内容の質の改善が必要なのではないか。改善がないままで大学へ補助金を増加することが、大学進学者や納税者にとって望ましいことなのか。
いずれも真剣に考えるべき大きな問題である。なぜかこのところ、多くの政党・政治家が「教育の無償化」を唱え始めた。しかし、「教育は無形の社会的資産である」という理由だけで財政支出を増やそうというのは、財務省のいう通り適切ではない。大学の在り方は国家経営の基本にかかわる大きな問題であって、国会で真剣に議論すべきことだ。詐欺師による市立小学校開校騒動ばかりを取り上げ続けるのはいかがなものか。