今回は、5月6日付弊ブログ「原油価格の行方は?」の中で、筆者が行った推測がなぜ間違っていたのかを反省しつつ、解説したい。きわめて専門的な、細かいことになるので、特に興味がある方以外は飛ばしてください。
先ほどブルームバーグがアップデートした記事 “Bets on OPEC rally are gone and that may be good for crude” (8:00 and updated 18:07 May 15, 2017)を読んでいて、あれ? ヘッジファンドはさらにネットのロング(買持ち)ポジションを減少させているのか、では、未決済取引残高(Open Interest)が増加しているのは何故だろうか、と疑問に思った。
なぜなら筆者は、Open Interestが増加しているのは、ヘッジファンドが買い戻しているからでは、と推測をしていたからだ。
ブルームバーグは記事の中で、5月12日(金)に発表された「CFTCデータによると、5月9日終了時点のMoney Managers(ヘッジファンドが主体)のFutures(単純先物)とOption(オプション先物)を合わせたネット・ロングは17%減少し、1億6,881万4千バレルになった」と書いている。#340で参照したのはFTの記事だがFuturesだけのポジションで、5月2日までの1週間で「1億6,300万バレル」まで「約26%、5,800万バレル」減少した、というものだった。ブルームバーグの記事はOptionを含めているので、FTのものと数値は合致しないが、Futuresのネット・ロングも減少しているのは間違いないだろう。
一方Open Interestは連日増加し続けており、5月12日には23億866万4千バレルという史上最高を記録している。いったい全体、誰が、どのようなポジションを増やしているのだろうか?
疑問に思った筆者はCFTCのHPを検索してみた。
全体の解説は省略するが、なんとヘッジファンドはショートを増やしているのだ。このようなことがあるので、全体のOpen Interestは増えているが、ヘッジファンドのネット・ロングは減少している、ということが起こっていたのである。
ヘッジファンドの5月9日(火)のポジション(と、前週比)は次のようになっていた。
ロング 299,622千バレル (68千バレルの増加)
ショート 183,771千バレル (47,222千バレルの増加)
ネット・ロング 115,851千バレル (47,154千バレルの減少)
元オイルトレーダーだった筆者は、この動きを次のように解釈する。
ヘッジファンドがロングポジションを減少させずに、ショートポジションを増やしたということは、必ずしも価格が下がり続けると判断している訳ではない、ということだ。下げも上げもあるので、下げへの用意をしつつ上げのチャンスを失わないように、すなわち臨機応変に対応できるようなポジションにしたのだ、と。なぜなら、減少はしているが、依然として「ネットでロング」のポジションなのだから。
はてさて、この解釈があたっているのかどうか、誰か解説してくれないかな?
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年5月15日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。