【映画評】ラプチャー 破裂

Rupture

蜘蛛(クモ)が何よりも嫌いなシングルマザーのレネーは、ある日突然、見知らぬ男たちに拉致される。目覚めるとそこは、不気味な隔離施設。監禁されたレネーは、その人物が最も嫌う物を与え続けるという、異様すぎる人体実験の被験者にされてしまう。拘束され動けないレネーは、執拗なまでの“蜘蛛攻め”を受け続けるが、その果てに、彼女の身体は驚くべき変化を見せ始める…。

最も嫌いなものを与え続けるという謎の人体実験にさらされる女性の運命を描く異色ホラー「ラプチャー 破裂」。ラプチャーとは、副題にある“破裂”を意味するが、本作の場合、人間の中にあるものが、極限状態に達した時、何かを破って外に出てくるという、内部からの圧力による破裂である。大嫌いなものとは、例えば、ヘビだったり、幼少期のトラウマである親の叱咤だったり…とさまざまだが、本作のヒロインの場合は、蜘蛛(クモ)。これは、変質者による嫌がらせレベルなどではなく、目的は極限の恐怖と嫌悪感を引き出すことなのだ。こんな実験で、いったい何をしようとしているのか?という謎が物語を引っ張る。レネーや、他の被験者には共通の特徴があるが、レネーの場合、スカイダイビングをして従来の自分を変えたいという変身願望がある。この変身が、すなわち破裂(ラプチャー)だと考えれば、彼女に“素質”があることは納得できるのだ。

拉致、監禁、蜘蛛攻め…。こう聞くと、バカバカしくもB級臭たっぷりの話に思えるが、終盤、物語が、ホラーからSF的要素を帯び始めると、これが宇宙空間ではなく見慣れた地球の日常で起こることに戦慄を覚える。秘めた強さを感じさせるノオミ・ラパスが、不思議なほど適役。それにしてもこの終わり方、あるのか、続編?ともあれ、「セクレタリー」で注目されたスティーヴン・シャインバーグ監督のカルトな感覚には、引き続き注目しておきたい。
【60点】
(原題「RUPTURE」)
(アメリカ/スティーヴン・シャインバーグ監督/ノオミ・ラパス、ピーター・ストーメア、マイケル・チクリス、他)
(不快度:★★★☆☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年6月5日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。