塩でキメる!梅雨をうまく楽しく過ごす方法

尾藤 克之

写真は青山氏(ひむか遊パークうみウララHPより)

「塩分を摂取しすぎると高血圧になる」ことは誰でもしっている。戦前~60年代頃、日本人の食塩摂取量は20g/日を超していたが、厚労省が10g以下/日を奨励してからは、減塩ブームが日本各地にひろがった。現在では、食塩摂取量の平均値は、10.0g(男性11.0g、女性 9.2g)となっている(出典:平成27年度 国民健康栄養調査結果・厚労省)。

日本と世界の塩の図鑑』(あさ出版)の著者であり、日本ソルトコーディネーター協会(代表理事)の、青山志穂(以下、青山氏)は「塩」の専門家である。実は、塩は種類を変えるだけで、味が変化し塩分調整(減塩、適塩)ができることをしっているだろうか。毎日、摂取する塩のトピックを今回は紹介したい。

■減塩ではなく適塩を心がける

――塩がちょっとしたブームになっている。デパ地下の食品売り場には天然塩や岩塩、さらには塩をつかった食材が販売されている。

「その人それぞれに合った適度な塩の量を摂取すること、それを『適塩』といいます。居住地域、生活環境、運動頻度、年齢、性別、身長や体重など、人の状態によって、1日に失われる塩の量、つまり必要とされる塩の量はさまざまです。汗をかく日もあれば、かかない日もあるので、状態は刻々と変化します。」(青山氏)

「必要な塩分量というのは、人や日によってバラバラで当たり前です。自分の状況を把握し、その日その時に応じた『塩の摂り方をすること』。これが、『健康的に塩を摂取する』ということなのです。」(同)

――さらに、塩がおいしく感じられる加減は決まっているといわれている。

「人が塩味をおいしく感じられる濃度は、約0.5%~3.0%です。徳川家康が英勝院に『食べ物で一番うまいものは何か』と尋ねたとき、『塩ほど調法で、うまいものはありますまい』と答えました。『では一番まずいものは何か』と尋ねると、『それも塩です。塩味が過ぎれば食べられません』と答えたという逸話(故老諸談)が残っています。」(青山氏)

「塩加減というのは微妙で、少しの加減の違いが料理の味に大きく影響します。どの塩を使うかも重要ですが、塩加減をコントロールすることがもっとも大切です。」(同)

■トレンドは「酒+塩」のマリアージュ

――日本では昔から枡の縁に塩を盛り、それをつまみに日本酒を飲むという習慣がある。酒の肴が不足したり、貧しかったときに必要に迫られた飲み方だった。いまでも、日本酒の味や香りが引き立つ、楽しみ方のひとつとしてしられている。

「ほかにも、マルガリータやソルティ・ドッグなど、ロックグラスの縁をレモンで濡らして塩をつけ、スノースタイルにするカクテルは定番です。日本酒やビール、ワイン、カクテルなど酒にもさまざまな種類があります。塩も種類が多いので、豊富なバリエーションを考えることで、楽しみがグンと広がります。」(青山氏)

――豊富なバリエーションとのことだが、ちなみにビールにマッチする塩にはどのようなものがあるのだろうか。

「醸造方法によって多くのスタイルがありますがビールにも苦味があるので、マグネシウムを含んだ苦味のある塩はビールの苦味がをうま味に変えます。バナナフレーバーなら、甘味が強い塩を合わせると香りが濃厚に、柑橘フレーバーのビールなら、酸味のある塩を合わせるように、共通した味わいの塩をセレクトするのがおすすめです。」(青山氏)

「つまみになる塩もあります。酒との相性はもちろんのこと、味や形に特徴がある塩を選ぶのがおすすめです。ただ、主役は酒。塩の味の余韻が長すぎない、最後に塩の味が残らない塩を選びましょう。食感のあるタイプの塩を選ぶと、カリカリした食感で、よりつまみ感が増します。」(同)

■塩はクリエイティブな調味料

――枝豆をツマミにビールを飲むとき、いつもと違う塩をふりかければ、新しい感動が生まれるかもしれない。それはまさにイリュージョンの世界だ。

「たかが塩とあなどらないでください。塩に少しこだわるだけで、酒の楽しみ方は無限にひろがります。そして最後に“ひと言!”。塩に限らず何でも摂りすぎは身体に悪影響を及ぼします。おいしく、身体にいい塩ライフを、楽しんでください。」(青山氏)

――「入梅の頃となり、うっとうしい雨の日が続いております」という時候の挨拶があるように、この時期は苦手な人が少なくない。塩ライフを通じて、新たな梅雨の楽しみ方を発見したいものである。

参考書籍
日本と世界の塩の図鑑』(あさ出版)

尾藤克之
コラムニスト

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