“共謀罪”落としどころあれこれ③

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警察による捜査の適正を担保する仕組みの検討

まあ、日本の警察がフィリッピンのようになってしまう虞はないと現実にはないと思ってはいるが、監視のシステムだけは持っていた方がいいだろう。

麻薬の取り締まりを徹底しようとして、検察官の経歴があるフィリッピンの大統領は令状なしでの売人や麻薬取扱業者の身柄拘束を奨励するのみならず、裁判手続きを経ないままでの処刑まで認めている、というニュースを見たことがある。

まあ何ということをやるものか、と驚き呆れてしまったのだが、大統領の人気はこれで益々高くなっているという話だったので、益々呆れてしまった。

犯罪の撲滅のためなら何をやっても許される、という論理なのだろうが、私にはとても理解できない。
こういう乱暴なことが罷り通るような世の中だと、本当にトンデモナイことが起きてしまう。

警察官が自分の気に食わない人間を売人だと言って逮捕し、警察の中で処刑しているなどという話まで漏れ伝わってくる。まさかまさかと思うが、法の手続をしっかり踏まないと、こういう無法が罷り通る暗黒社会になってしまう。

さすがに日本ではそういうことはないだろう、と思ってはいるのだが、予断と偏見、思い込みが罷り通る社会ではそういうことが起きる可能性は否定できない。

私は、今でも鹿児島の志布志事件が理解できないでいる。

選挙違反の買収の嫌疑で集落の人を一網打尽に検挙し、長期の勾留をして自白を強要し、ついに全員を起訴に持ち込んでしまう。弁護団の懸命な弁護活動で全員の無罪判決が確定したが、捜査の謙抑性などどこにも認められない。

一部の幹部の予断、偏見、思い込み、あるいは、選挙違反検挙の成績を上げようとするための警察の一部の幹部の暴走だったのかも知れないが、一部の幹部の暴走を抑止するための警察の内部のチェックシステムがまったく機能していないのが問題である。

共謀罪(政府推奨の名称ではテロ等準備罪)の導入で冤罪事件が発生する虞が強くなりますよ、と日弁連や多くの有識者が指摘しているのだが、どうも自民党の国会議員にはそういう懸念が通じないようである。

まあ、捜査機関の捜査を監視するシステム構築の話だから捜査当局の中からそういう趣旨の話が出てこないのは当然と言えば当然なんだが、国会には行政執行の適正を実現するために行政の監視をする権能も付与されているのだから、国会議員の方々は与野党を問わず、もう少しこの類の議論を深掘りされた方がいい。

国会が議論するだけでも、一定程度の抑止力、牽制力にはなるはずである。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年6月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。