「事業は霞が関で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」に書いたとおり、行政事業レビュー公開プロセスでは現地調査が実施される。国土交通省の現地調査では、丸一日かけて、品川・大手町・荒川河口・大手町・海老名とぐるぐる回った。
首都直下と南海トラフ地震で震度6強以上が想定される地域では、鉄道施設に耐震補強を施している。電車が高架を走る区間では高架橋に鋼板を巻いて補強する。高架橋の下は駐車場や店舗として利用されている場合が多いので、それらを動かして補強工事を実施することになる。このため時間がかかり、事業は5年間にわたって続けられてきた。今回は、京浜急行新馬場駅周辺で進行中の補強工事の様子を見学した。
この見学は地上を歩くだけで済んだが、国道の老朽化対策では橋梁の中に入ることになった。橋脚に付けた階段を上ると橋梁にマンホールが開いている。そこから橋梁の中に入り、橋梁上面(車道の真下)のひび割れやボルトのゆるみを点検する。ひび割れ(疲労亀裂)があれば橋梁上面から車道の舗装をはがして補強板を付ける。写真は補強工事が済んだ箇所を橋梁の中から写したものである。
橋梁内の通路は頭をかがめて歩く高さしかないのでヘルメットを着けたが、それでも50メートルも進む間に何度か頭をぶつけることになった。橋梁内は空気が動かないので蒸し暑い。昨年は梯子を上って地下街の天井裏を覗いたのを思い出した。現地調査も結構しんどい。もちろん、そんな狭い空間での作業はさらに大変である。
高度成長期に整備が進んだ国道の橋梁やトンネルは老朽化が進行している。この寿命を延ばすために定期的に点検が行われ、早め早めに修繕するようになっている。
それでは点検修繕予算は適切なのだろうか。米国での橋梁落下事故後の追加安全対策は経済合理性を欠いていたという論文も発表されている。一方で、この論文は点検制度の強化を求めている。
公開プロセスでは事業の費用対効果を議論するが、実際にどのように点検し修繕しているかを理解するために、まずは現地調査が行われたのである。事業は現場で行われている。霞が関で空論を交わすことにならないように、公開プロセスでは現地調査が重要である。