6月15日にFacebookが興味深い発表をした。テロ対策のため、投稿されたテキストや画像を解析するというのだ。解析には人工知能(AI)を活用し、危険なコンテンツは削除し、テロリストグループも一括削除するという。
6月26日には、Facebook、Microsoft、Twitter、YouTubeが、テロ対策を強化する目的で業界団体Global Internet Forum to Counter Terrorismを組織したと発表した。
世界レベルでのテロ活動の深刻化を反映したアクションであるが、利用者の投稿コンテンツを解析したり削除したり、SNSプロバイダはどうしてできるのだろうか。通信の秘密はないのだろうか。
SNSプロバイダが許されるのは、利用者が利用規約に同意しているからである。Facebookの利用規約には「差別的、脅威的、またはわいせつ的なコンテンツや、暴力を誘発するようなコンテンツ、ヌードや不当な暴力の描写が含まれるコンテンツは投稿できません。」という規定がある。Googleの利用規約にも「ユーザーがコンテンツをアップロード…すると、ユーザーはGoogle…に対して、そのコンテンツについて、使用、…変更…を行うための全世界的なライセンスを付与する」とある。
わが国でも、2012年にヤフー(Yahoo! JAPAN)がメール連動広告を開始した際に、総務省が利用規約にそれを明示すること、メール解析を希望しない利用者はいつでも解析を中止できることなどを条件に認めたことがある。
通信の秘密は憲法に規定されているが、利用者が利用規約に同意すれば、通信すなわちアップロードしたコンテンツをSNSプロバイダが解析できるというわけだ。テロ等準備罪の審議過程で反対派は警察国家への懸念に言及していたが、すでにSNSプロバイダが警察機能の一部を果たしているのである。反対派のお人よしぶりがわかる。
利用規約は誰も読まないというが問題である。確かに「同意しますか」と質問されるが、長々と利用規約を読んでから同意する人はいない。しかも、利用規約は頻繁に改定されるが詳しい説明はない。
利用規約などを総称して民法では約款という。先の国会で民法に定型約款規定を加える改正が成立し、「社会通念に照らして…相手方(利用者)の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす」と規定された。この条項は、SNSプロバイダが利用者のプライバシーを著しく侵害しようとした際などに歯止めになる。