「運命の出会い」が上手くいかない本質的な理由とは?

尾藤 克之

セミナー会場にて筆者撮影(2017年9月23日)

アゴラでは、「ビジネス著者養成セミナー」という著者希望者のためのセミナーを隔月、「出版道場」という出版ニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。私は、著者や出版社から献本されたなかで、ニュースとして相応しいものを掲載することが多い。本記事では、『これから、どう生きるのか』(大和書房)を紹介したい。

著者は本田健(以下、本田氏)、『ユダヤ人大富豪の教え』をはじめ多くのベストセラーがある。先日、アゴラに「パートナーの存在は幸せを左右するバロメーターになる」のエントリーをしたが、これが本田氏の目に留まった。9月23日(土)開催のセミナーに取材を兼ねて伺ったのでその様子も紹介したい。

まずは、キャプチャー画像をご覧いただきたい。400~500名近くが出席していただろうか。出席者の顔ぶれも、経営者はもとより、国連関係者、医学博士、日本を代表するカメラマンなど多岐にわたっていた。今回は、パートナーシップについて話を伺った。解釈によってパートナーシップの意味は限りなく変化することをお伝えできればと思う。

運命の出会いは上手くいかない

――世の中でパートナーシップほど、運命を感じさせるものはない。「男女の出会い」「仕事での出会い」。出会いが劇的であるほどインパクトは大きくなる。

「私の知り合いに、海外のある場所で出会った人に、1ヶ月後に、また別の場所で会って結婚した人がいます。それは、偶然以上の何かに導かれたと感じたからでしょう。劇的ではないとしても、結婚したてのカップルに2人の出会いを聞いたら、ほとんどが『運命的な何か』を感じたといって、エピソードの話をしてくれます。」(本田氏)

「2人は運命に導かれて、幸せをつかんだと思っているわけです。ここで少し意地悪な見方をすれば、そうして運命的に出会った2人が、数年後には、ののしり合っているかもしれません。日本の最近の離婚率は35パーセント、3組に1組が離婚していることを鑑みれば、預言者でなくても、確率的にそう言えるわけです。」(同)

――そして、本田氏は次の事例を紹介する。非常にわかりやすいので、皆さまも自分に照射しながら読んでいただきたい。

「ある人が結婚したのは、交通事故がきっかけでした。ふだん行かない道を左に曲がってトラックにはねられ、入院したそうです。『なんて不運なんだ』と思ったところ、隣の患者さんを見舞いに来た素敵な女性と知り合い、結婚することになったのです。彼は結婚当初、トラックにはねられたことを神様にどれだけ感謝したことでしょう。」(本田氏)

「ところが、その数年後、2人が大げんかして、お互いをののしりあい離婚することになります。『どうして、結婚してしまったんだろう』と後悔するに違いありません。『あの交通事故にあわなければ』と悔やむでしょう。必要以上に運命を求めると、そのぶん、あとで裏切られたような気分になることがあるのです。」(同)

――あえて私は別の事例を紹介してみたい。有名企業といわれる企業群がある。難関だが運よく内定を勝ち取った。「運命的な出会い」を感じている。友人からは羨望の眼差しだ。しかし、有名企業に入社したところで人生の勝利者になるわけではない。入社しても、上司、同僚が最悪だったらブラック企業になってしまう。そして、1年後に退職する。

ブラック企業といわれる企業群がある。人気も無く余裕で内定が取れたが、他を落ちてしまった。「人生の絶望」を感じている。友人からはバカにされる。しかし、入社したら、上司、同僚に恵まれて、数年後には管理職に昇進する。さらに数年後、上司に引き上げられて役員になった。ブラック企業でも、このようなシチュエーションなら勝ち組である。

「パートナーシップの意味は解釈によって限りなく変化します。『運命の出会いだ』などと舞い上がらずに、冷静に見つめることが大切でしょう。」(本田氏)

リスクを取ったカップルほど幸せになれる

――あなたにパートナーはいるだろうか。真剣に向きあっているだろうか。真剣に向き合うことでパートナーシップが構築できることを多くのカップルは知らない。

「パートナーシップは、どれだけリスクを取るかで深さが違ってきます。リスクを取るというのは、できれば隠しておきたい自分の弱さを相手とわかち合うことです。恥ずかしい部分や自分に価値がないと思っているところ、自信のなさをパートナーに明らかにすることです。弱音や愚痴を言ったりするのとは違います。」(本田氏)

「難しいかも知れませんが、『これを言ったら相手に嫌われるだろうな』と思うようなこともお互いに言い合えないと関係は深くなりません。大多数のカップルは、単なる親しい同居人として、表面的な部分だけをわかち合って暮らしています。だから、子どもが生まれたあとは、つながりもロマンスの炎も消えてしまいます。」(同)

――そうなれば、コミュニケーションにもいたわりが見られなくなる。夫婦には多くの形態があるが、それでは一緒にいる意味すら見出せなくなってしまう。

「たとえば、『お金を共有したくない』『つらいことがあっても干渉されたくない』というのは極端な例ですが、これでは、二人が一緒にいることの意味がなくなります。相手に近づくために、あえて危険を冒すというリスクを取ることも必要です。自らの情動に向き合い、勇気をもって正直に話してみましょう。」(本田氏)

本書は「人生訓」として読み解いていくと新たな気づきがあるように思われる。気がついたら、秋分の日を過ぎている。秋の夜長に『これから、どう生きるのか』(大和書房)を読みながら、人生について考えてみてはいかがだろうか。

尾藤克之
コラムニスト

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