ゾゾタウン「送料自由」の狙いをEC事業者の立場で語る

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

Yahooトップニュースになるほど、いま世間を騒がせているゾゾタウン「送料自由」。ネット上ではいろんな意見が割れていますね。「以前に社長が”品物が送料無料で届くのが当たり前だと思うな!”っていってたのに」「みんな0円を選ぶから意味がない」「再配達は課金すると思っていたのにな」などそのどよめきはおさまることがありません。前澤社長は何を考えているのか?無意味な施策と呼ばれているが本当の狙いは?といったことをネットショップ運営者の私がEC事業者の立場で考えてみたいと思います!

3タイプに分類できるECユーザー

ネットショップを利用するお客様は3タイプいます。「即日発送してほしい!どうしても早く届けたい!!」と急いでいるお客様。「来月この日のこの時間帯にお願いします」と計画的に事前指定を入れているお客様。「いつでもいいから、そちらのタイミングのいい時に」と急いでいないお客様。

当店でも上記3タイプのいずれかに必ず当てはまります。実際にデータを取ったわけではないのですがざっくり肌感覚でいうと、「急いでいるお客様…3割」「計画的に注文をするお客様…5割」「いつでもいいよのお客様…2割」という具合です。

なぜ3タイプの注文者に分かれるのか?

急いでいるお客様はわかりやすいです。それは急に必要になったか、もしくはギリギリまで注文をしなかった場合です。当店では買い物かご上で日付指定ができるのは「8日後以降」としていますが、「お急ぎ特急便」というサービスを提供しています。こちらは電話を頂ければ在庫があれば電話を切って数分後には発送準備、発送という流れで在庫がない場合も急遽仕入れをしてできるだけ即日発送という流れです。本気を出せば東京23区まで注文から24時間以内にお届けができます。そしてお急ぎ特急便はほぼ毎日何件かは電話をいただきますので、一定の需要があるようです。

急いでいないお客様。こちらは昨今の宅配業者のスピード配送問題を意識して、店舗や宅配業者への配慮をしてくれている場合と、より良いものをほしいと思っている場合です。当店の場合は、毎日フルーツの仕入れをして新鮮な内に出荷してしまうので、ほとんど在庫を持たないようにしています。ですが、突発的な大量注文もあるので少しは在庫を持っています。急いでいないお客様は「いつでもいいよ」という代わりに、「その代わり新鮮で良品を送って下さい」と言われます。このリクエストは「急がなくていいから、いいものを」という交換条件になるわけですね。

そして計画的な注文のお客様。これは特にギフト用途で見られる行動です。自分用に食品や服を買う場合は基本的にすぐ食べたり、着たりしたいものです。ショッピングカートに商品を入れたときには気持ちが温まっていますので、またずに早く使いたい!と思うのが自然な発送ですからね。しかし、ギフト用途だとその事情は異なります。例えばお誕生日プレゼント!これは誕生日の前日や、当日に届けるという予定は絶対に変わることがありません。むしろ準備が遅れるといざ注文する時に在庫がなくなったり、忘れたり、その日に間に合わなくなるリスクがあります。そのため、「目当てのギフトは早めに抑えておく」というのは合理的な行動といえます。

狙いは「無料の広告宣伝」

さて、ゾゾタウンはそんな3タイプいるお客様へ「送料自由」というオファーをしました。その理由については

“前澤社長は自身のツイッターで「0円でも500円でもお客様の自由です。自由に価格を決めていただくことで、運ぶ人と受け取る人との間に、気持ちの交換が生まれれば素敵だなと思います」とコメントした。

引用元:ユーザーが送料を決める!? 「ゾゾタウン」が“送料自由”を試験導入

といっています。これを見てもはっきりいってよく分かりません。上述した3タイプのユーザーの誰にもメリットがありませんね。そしてゾゾタウンに送料を500円にしても、そのお金が宅配業者へ流れるとはいっていません。かといって、たくさん払えばその分早く配送するわけでもないようです。うーん、全然意味が分かりません。ゾゾタウン、宅配業者、ユーザーという3者間でのメリットがまったくないように思えます。いやメリットはゾゾタウンのみにあるでしょう。このよくわからないオファーでネットはものすごくざわつき、そしてYahooニュース掲載までされています!これはも無料でできるとてつもない広告宣伝効果があるといえるでしょう。このことについて前澤社長が自らNews Picksでいっています。

世の中をもっともっと自由に変えていきます。議論が巻き起こることも自由だからこそ。

固定概念に風穴を開けていくことも起業家の役目。何やったってヤフートップに出るようになってきた。もっともっとかき回すよー!!笑

引用元:NewsPicks「ユーザーが送料を決める!? 「ゾゾタウン」が“送料自由”を試験導入」

情報化社会だからこそ、分かりやすいものはたちまち答えが導き出されてしまいます。正しいか?うそなのか?しかし、今回の取り組みは「よくわからない」からこそ、その意図を解体すべくNews Picksで1,000picksを超える騒ぎになっているわけです。

この取り組みにはじめから答えなんてありません。Yahooニューストップ入りで、大きな宣伝効果を得られたということを除けば。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。