産経新聞サイトに『中国、次は“AI教師”5兆円投入5億問蓄積…世界一の“AI国家”への野望』という記事が出た。香港の英字紙South China Morning Postを元に、中国の教育投資について紹介した記事である。農村部の子供たちも最新のAI教育が受けられるように教育関係予算の8%以上を投入する計画で、政府は既に昨年約5兆円を投資したという。
頻繁に同様の情報が流れてくる。10月25日付のChina Technology Newsは、中国でのAI応用分野として薬と自動車の次に教育が3位にランクされていると伝えた。2016年度の教育予算では9.8%がデジタル化関連投資に費やされたとグラフで示す。記事によれば中国遠隔教育の市場規模は2017年に4.8億円である。
オーストラリアRobotics誌も同日にAIを利用した中国での教育政策に関する記事を掲載した。教員は毎日2〜3時間かけて生徒に出した課題を採点してきたが、これをAIに代替し、また個々の生徒に適した出題をするように改善するという。このAIを「スーパー教師」と称し、技術は上海の新興企業Master Learnerから提供される。
少々古いが2015年版のOECD調査は「すべての教職員のデジタル教育リソースへのアクセスを拡大するためのプロジェクトと共に、地方の小中学校向けの遠隔教育プログラムを政府は立ち上げた。これによって農村部の教師が都市部で生まれた高品質の教材にアクセスできるようになり、農村部の教師の質を向上させる。」と中国の教育政策を紹介している。
わが国では教育無償化政策について検討が進んでいる。幼児教育から高等教育まで無償化の範囲を拡大して「人づくり革命」に役立てようというものだ。
しかし、この教育無償化の議論にはAIをはじめとする新技術をどのように利用するかという観点が落ちている。古い方法で教育する教育機関に通う費用が無償化されても、子供たちに明るい未来は来ない。グローバル化し知識社会化する現状に適応し、未来に生きる力を与える教育の開発に政府投資を増やす必要がある。