今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、仕事の際に、某誌の記者にふとタイトルのような質問をされて、筆者はうーんと唸ってしまいました。それくらい、これはとても重要で本質的なテーマだったりします。90年代であれば、筆者は迷わず「大企業でまったり働くこと」を推奨したでしょう。でも、正直言うと今は即答できかねます。
たぶん正解というのはなくて、最後は本人がどういう風に働きたいかという価値観で決まる問題なのでしょう。というわけで、今回はこの問題の論点を分かりやすくまとめておこうと思います。キャリアというものを考える上で良いガイドブックとなるはずです。
どんどん高くなっている終身雇用のコスト
学生と話すと、今でもこんな意見の人が多数派です。
「自分は終身雇用の保証されている大企業で定年まで安定雇用されたい」
もちろんそれはそれで一つの生き方なので構いませんが、一つだけ覚えておいて欲しいのは、世の中にはただ飯はない、ということ。つまり「終身雇用されるコストは自分で負担せねばならない」ということです。
終身雇用のコストの代表的なものは、以下の3つです。
・ある程度は残業しないといけない
いつも言っているように、日本企業では雇用者数ではなく残業時間を通じて雇用調整するので、繁忙期にはいっぱい残業することが要求されます。法律も残業時間に上限をもうけていないのはこのためです。
・会社都合で全国転勤しないといけない
「北海道支店で人足りないから、来月から転勤してね」と言われればどんなに寒いのが苦手でも行かねばなりません。欠員の出た事業所に人を移すことで雇用そのものは守られるわけです。
・なかなか賃上げしてもらえない
たとえ今は業績好調であっても10年後20年後はわかりませんし、東芝や神戸製鋼みたいに誰も知らない爆弾を抱えているなんてこともありえます。だから、本来なら貰うべき水準から2,3割くらいは低く抑えた給料で我慢しないといけません(どれくらい抑えるかはその会社の将来の予測による)。いうなれば会社に失業保険の保険料払っているようなものですね。あ、でも本当の失業保険じゃないから経営危機になったら容赦なく無かったことにされますが。
まとめると、終身雇用の保証される大企業で働くためには、一杯残業して全国転勤にも応じつつ、抑制された給料で我慢しなければいけないということです。横並びに近い給料をもらいつつ、仕事の出来ない人の分もみんなでカンパしあい、手を取り合って定年というゴールまで歩いていく運命共同体のようなイメージですね。
このコストは時代によって大きく変わります。90年代までは、それはかなり安いものでした。なぜなら多くの企業が「日本はこれからもぐんぐん成長していくだろう」と考え、気前よく昇給させてくれたから。だから、筆者もギリギリ90年代なら「ヒラでも大手でいいんじゃないか」と考えたと思います。
でも、バブル崩壊を経て時代は大きく変わりました。もともとの低成長にくわえ人口減社会も到来する中、今後の日本経済は横ばいか下手をするとマイナス成長も予想される状況です。つまり、そうした状況においてもなお終身雇用を維持しようとすれば、そのコストは90年代以前と比べて一気に跳ね上がるということです。正社員の賃金が一向に上がらない理由は、おそらくコレでしょう。
ちなみに現在、正社員と非正規雇用の賃金格差は過去最低水準にまで縮小しています。非正規雇用の人は終身雇用のコストを負担する必要はないですからね。
【参考リンク】なんで非正規の賃金は上がるのに正社員は上がらないの?と思った時に読む話
「何が何でも就活では大企業に入るべき」「大企業に入った以上は土下座させられようがぶっ倒れるまで残業させられようが定年までしがみつくべき」といった価値観が、いま大きく揺らぎ始めているのです。
以降、
大企業でしんどそうにしている人、中小企業で飄々と働く人の違い
これから最重要なスキル
Q:「明らかに不採算のプロジェクトで手を抜くのはアリ?」
→A:「やる気がない奴と思われることなくさりげなく身を退くには……」
Q:「維新の丸山くんは今後どうするべきですか?」
→A:「もうやってられんわ!と言いたい人に怒鳴られただけなんで気にしなくていいんじゃないですかね」
雇用ニュースの深層
「どうせ出世できないなら残業も転勤もしたくないです」というのは人として普通
ゆとり教育とか関係無しに、ポスト年功序列ではそれが普通なんです。今まで皆でバリバリ働いてたほうがおかしいわけです。
横並び総合職ではエリート人材は囲い込めない
一般職コースの需要があるということは、超エリートコースの整備も必須だということでもあります。
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2017年11月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。