国の2018年度税収の見積もりが58兆円を超え、27年ぶりの高水準となる公算が大きくなったと29日付けの日経新聞が伝えている。国の税収が58兆円を超えれば1991年度の59.8兆円以来となり、バブル期の好景気に並ぶ水準となる。
この税収増の背景にあるのは8%への消費税率引き上げ分とともに、企業収益が過去最高を更新するなど、世界的な景気回復による国内景気への影響も大きい。賃金の伸び悩みなどから景気回復への実感はあまりないかもしないが、物価上昇も抑えられていることで緩やかな回復との認識も広まっているとみられる。
本来であれば、景気の低迷時には政府による財政対策などによってある程度の歳出を増加させることも必要になろう。しかし、それは財政悪化を招くことになる。このため、景気回復時の税収増加分は、財政健全化にむけて赤字国債の削減に振り向けるのが本筋といえよう。
しかし、2018年度の国の歳出規模は当初予算としては6年続けて過去最大を更新し、98兆円前後に達する見込みとなるなど、税収が増えた分、歳出も増加させている。このため財政健全化はお座なりにされているのが現状である。
安倍首相は2019年10月の消費増税を予定通り行い、増収分の使途について約2兆円分を国の借金返済から「人づくり革命」などに変更す教育無償化や社会保障制度の見直しにあてるとしている。
何が何でも借金返済に努めるべきと言うわけではないが、本来であれば財政悪化に向けたアラームとなるべき国債の利回りも日銀の異次元緩和によって押さえ込まれており、財政規律が緩みやすい状況となっている。これはアリとキリギリスのイソップ寓話で言えば、キリギリス状態といえる。もう少しアリの立場となって、予算編成等も考える必要もあるのではなかろうか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年11月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。