アメリカ人の平均寿命、2年連続で短縮の怪

映画”スターウオーズ/最後のジェダイ”をご覧になった方は、何らかの衝動に駆られたのでしょうか?

同作品はスター・ウォーズ・ファンの間で大いに物議を醸し、”作り直し”の嘆願書が立ち上がるほど。少なくとも、全世界から5万人近くが署名したといいます。しかし、まもなく発起人が撤回を表明するに至りました。ジョージア州にお住まいのこの方いわく、嘆願書を解説した時は強い鎮痛剤を服用中だったんですって。恐らく、オピオイドでしょう。交通事故の手術費用を工面できず、クラウド・ファンディングで資金集めを試みたものの失敗し、鎮痛剤に頼る鬱屈した毎日。そこにスター・ウォーズ最新作が追い討ちを掛け、あらゆる不満が爆発し嘆願書の立ち上げを思い立ち、行動に写したといいます。”強い鎮痛剤”がもたらす、副作用の一例と言えるかもしれません。

米国でオピオイドのような鎮痛剤がいかに流通しているかを物語るエピソードと言えますが、さらに深刻な悪影響が及んでいます。アメリカ人の寿命が、ここ2年で短くなってしまっているのですよ。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)傘下の国立保健統計センター(NCHS)の最新調査結果によれば、アメリカ人の平均寿命は78.6歳となり、2015年の78.7歳から0.1年短縮してしまいました。先進国では寿命が延びているケースが多いなか、米国で2年連続の短縮は1962〜63年以降で初めて。特に男性で寿命の短縮化が進行しており、2015年の76.3歳に対し2016年は76.1歳と0.2年縮まりました。

逆に女性の平均寿命は、2015〜16年ともに81.1歳で変わりません。

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(作成:My Big Apple NY、出所:)
気になる死因別ランキングは、以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

成人肥満率が過去最高を更新したにも関わらず、心臓病や糖尿病といった死因は2015年から2016年にかけ、10万人に対する死亡者数が減少していました。ガンも、同様に減少が確認できます。

2016年に増加していた死因こそ、”不慮の事故(unintentional injuries)”。人口10万人に対し、2016年は47.4人が”不慮の事故”で命を落とし、2015年の43.2人から増加していたのです。この”不慮の事故”に、薬物中毒が含まれている点がポイント。そう、この背景にはトランプ米大統領やイエレンFRB議長が警鐘を鳴らすオピオイドを始めとした鎮痛剤蔓延の影響が横たわります。アメリカ国立衛生研究所(NIH)の調査では、オピオイドをはじめとする薬物中毒死亡者は2016年に6万4,070人と、過去最高を更新していました。

米国は世界の寿命ランキングで31位、G7諸国では唯一30位以下という体たらく。この状況を打破する上で必要な薬物中毒の悪循環を止められるのかは、ひとまずトランプ政権に掛かっています。チャップリンの名言「この人生は、どんなにつらくとも生きるに値する。そのためには3つのことが必要だ。勇気と、希望と、いくらかのお金だ」からお借りするなら、せめて税制改革でお金がまわるようになれば良いのですが。命あっての物種とはよく言ったもので、勢い余って鎮痛剤服用中に嘆願書の立ち上げたとしても、生きていれば撤回のチャンスがありますからね。

(カバー写真:Nathan Rupert/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年12月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。