安い後発薬品に熱心でない調剤薬局

積極的に価格を開示しない

調剤薬局、薬剤師について批判的な記事を11月に5回、書きましたらたくさんのコメントが寄せられました。最近、また気になったのが価格の安い後発医薬品(ジェネリック)の普及のことです。厚労省は医療費を減らすために、熱心に後発医薬品の普及を進めています。調剤薬局の現場では、必ずしもそうとはいえないのです。

最初にお断りをしておきますと、これから述べることは、私が通った調剤薬局における体験です。厚労省の医薬行政に協力し、しかも患者の立場に立って、後発医薬品を推進している調剤薬局もあるでしょう。そのことは否定をするつもりはありません。

後発医薬品は先発医薬品に比べ、一般的に3割から5割は安いとされます。先発薬と同じ有効成分が同一量、効能、効果、用法、用量も同じで、同等の臨床効果が得られるとものと、厚労省は後発薬を定義しています。大きな価格差は、後発薬は研究開発に関する研究開発費が少なくて済むためです。期限切れになった先発薬の特許をもとにコピー品を造るようなものです。

ここで月一回、通っている薬局での体験をお話します。通院している循環器内科で書かれた処方箋を提示して、薬を買います。領収書にある調剤明細書には、購入した薬品名5種類が書かれています。最近、厚労省が後発薬の利用を進めているニュースが目立ちますので、私も後発薬に関心を持っています。

要求すると説明書を出してきた

以前、眼科医院で「安い後発薬の保湿剤(ドライアイ対策)があります。切り替えますか」と勧められたことを思い出し、「購入した5種類の薬の単価を教えてほしい。後発薬があれば、それも教えてほしい」と薬剤師に話しました。なんと半値前後の支払で済む後発薬が2種類、ありました。

手渡された資料をみると、逆流性食道炎の薬「パリエット」は、1錠115円に対し、「当薬局で変更可能な後発薬は同67円」とあります。睡眠導入剤の「レンドルミン」は1錠24円に対し、「同10円」とあります。ほぼ半値か半値以下ですね。

私と薬剤師の会話は次の通りです。「随分、安いのですね。なぜ患者にこうした資料、データを始めからから出してくれないのですか。領収証になぜ添付しないのですか」。「要求があれば、お出ししています」。「厚労省が後発薬を推進しますよ」。「いえ、うちの薬局では、処方された医師が後発薬を使うか使わないかを決めることになっています」。

「薬剤師は医薬について医師と同等の知識をお持ちと、言われていますね。薬剤師が医師と相談のうえ、後発薬をもっと勧めたらどうですか」。「いえ、この循環器内科医院とは、後発薬を使うか使わないかを、医師が決める取り決めになっています。勝手にお勧めすることはできません。後発薬を使いたかったら、医師と相談してみたらどうですか」。

「後発薬の有無、価格が分からければ、相談を持ち掛けられませんよ」。なお、受け取った領収書には、備考欄に「後発」と書かれた薬もあります。一般の人にはなんのことか分かりません。以前は確か、この薬局でも、後発薬の有無、価格を表示した説明書をつけており、それを見て、切り替えたのだと思います。つまり、最近は要求しないと、出してくれなくなっているのでしょうか。

後発薬の使用率は80%が目標

この薬局はチェーン店ですので、次に本社に電話して、薬剤師と話をしました。「なぜ後発薬をもっと勧めないのですか」。「後発薬は多種類あり、店に置ききれないのです。限られたものしか扱っていません。患者さんがどうしてもこの種類にしてほしいと望まれ場合、お取り寄せしています」。置ききれないとしても、後発薬の一覧表を置いておいてほしいですね。

「おたくの場合、医師側が決定権を持っているルールになっているのはなぜですか」。「先発薬と後発薬は成分が同じでも、製造工程の違い、添加物の違いがある。患者さんに合うかどうか一概にいえないのです」。「厚労省が発売を認可しているのに、そんなに違いは大きいのですか」。「患者さんの気持ちにも左右されます」。

こんなやりとりがありました。すべての薬のうち、後発薬の使用率は60-70%で、政府は医療費の削減のため、2020年度までに80%とするとの方針を決めています。開きは大きいですね。米90%、独80%です。厚労省は「日本の場合、後発薬に関する情報不足、信頼性への不安」などによるといいます。

後発薬がすべての患者に適合するか、使ってみなければ分からないという微妙な問題もあるようです。複雑な症状の病気ではそうでしょう。それにしても、医師や調剤薬局がもっと積極的に、後発薬の有無、価格差を患者に示すよう努力すれば、情報不足はかなり解消されるはずです。製薬メーカーと医師側、薬局側との取引関係も、裏にはないのですかね。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。