アルゼンチンのパタゴニアで“第2のイスラエル”建国の噂

白石 和幸

パタゴニアで土地を買収したジョー・ルイス氏。トットナムのオーナーとして知られる(voltairenet.orgより引用)

アルゼンチンとチリに跨るパタゴニアは自然資源が豊富に眠っている広大な土地である。アルゼンチン側だけでもその面積は100万平方キロメートルある。日本の国土面積のほぼ3倍に匹敵する広さである。

2013年、巨額の負債に苦しむ当時のクリスチーナ・フェルナンデス大統領(2007-2015)政府はパタゴニアの一部を国際ユダヤ人共同体に売却した。それで得た資金でもって世銀そしてIMFからの負債を相殺した。

ユダヤ人組織がパタゴニアの土地を購入したことに対し、「第2のイスラエル国家」を建国するのではないかという噂が広まった。

この噂の根拠にあったのは、イスラエルがパレスチナに国家を建国する以前に、南米のアルゼンチンとアフリカのウガンダも建国の候補地として挙げられていたからである。それを提唱したのはシオニズム運動を起こしたジャーナリスト出身のテオドール・ヘルツルであった。彼はそれを『ユダヤ人国家』の著作の中でアンディニア計画として具体的に示したのであった。その資金源については、1895年にモーリス・ヒルシュロス男爵やロスチャイルド家族にも相談したという。

最終的にユダヤ国家はパレスチナの地に建国されたが、その後もユダヤ人のアルゼンチンへの関心は依然続いている。その証拠に、ラテンアメリカでユダヤ人が一番多く永住しているのがアルゼンチンで、その数は18万人。2番目にユダヤ人の多いメキシコの7万人と比較してもその2倍以上である。

ところが、また最近になって第2のイスラエル国家をアルゼンチンのパタゴニアで建国するのではないかいう噂が再燃しているのだ。その根拠になっているのは、英国プレミアムリーグのチーム「トッテナム」の会長で、175社のオーナーでもあるジョー・ルイス(79)がパタゴニアの土地を買いあさっているからである。同様に、チリ側のパタゴニアの土地も購入している。そこでは、2㎞ある滑走路も建設しており、プライベート機や軍機などが離着陸できるようになっているという。

しかも、好奇心をそそるのはフォークランド戦争で英国が勝利した以降、毎年8,000-10,000人のイスラエル軍人が2週間そこで休暇が取れるようにイスラエル軍が企画しているというのである。

その一方で、彼が所有している土地を通過せねば到着できない湖がひとつあるが、彼の土地を通過することが許可されていないとして複数のNGOがその許可を要求しているという。

また、チリ側のパタゴニアのアイセンとマガジャネスの両地方を2013年には9000人以上が訪問。彼らは3年間イスラエル軍に籍をおいたことのある軍人で静養も兼ねた訪問だったという。それ以来、ほぼ同じ規模で以前軍人だった人の訪問が毎年行われているという。

観光と静養を兼ねたイスラエル軍人の訪問について、隠された目的、即ち「第二のイスラエルを建国するのが狙いではないか」とアルゼンチン人の間で考えている者が結構の数でいるというのだ。

アルゼンチンの行方不明となっている潜水艦ARAサン・フアンが任務を終えて出港したのは正にパタゴニアの最南端の都市ウシュアイアであった。その後、パタゴニアの沖合に沿ってマル・デ・プラタに向かったのであった。極秘任務を授かっていたとされている。この事件の解明を担当しているカレタ・オリビア連邦判事も国家機密に関した極秘任務だったことを言及している。その為に、パタゴニアの最南端の方に向かったのであった。

パタゴニアの第2のイスラエル建国の噂とサンフアンの事件との間に直接の関係はない。しかし、パタゴニアの最南端に極秘任務をもって向かったというのは気に成るところである。