OECDは先ごろ『OECD学習枠組み2030』という文書を発表した。これには将来の教育システムに関するビジョンと、いくつかの基盤となる原則が書かれている。
昨日は情報通信政策フォーラム(ICPF)に上松恵理子氏をお招きして、ICTを活用した教育に従事する現職教員の能力向上に欧州はどう取り組んでいるか話していただいた。その中でもOECD文書が話題となったので、僕が勝手に翻訳してエッセンスを紹介する。
文書が強調するのは、地球の将来を担う子供たちに求めるポイントである。
2018年に入学する子供たちは、地球資源は無限に開発可能であるという考えを放棄する必要がある。彼らは人類全体の繁栄、持続可能性、そして幸福を大切にする必要がある。子供たちは、協力を分裂の上に位置付け、持続可能性を短期的利益の上に位置付け、責任を果たし能力を発揮する必要がある。
これからの年月で不可欠なものになる「明確で目的のはっきりした目標を学び、異なる視点を持つ他の人々と協力し、未開拓のチャンスを見つけ、大きな問題に対する複数の解決策を特定する能力」を中心に、「積極的で責任感を持つ、社会につながる市民になるために必要なスキル」に着目したカリキュラムが必要である。
OECD次のような人々の誕生を期待している。①創造的に思考を重ね、新しい製品やサービス、新しい雇用、新しいプロセスと方法、新しい考え方や生活、新しい企業、新しい分野、新しいビジネスモデル、新しい社会モデルを創造できる人々。②平等と自由、自律性と地域利益、社会変革と継続性、効率性と民主主義的プロセスなどの間の矛盾のバランスを取るため、他人のニーズと欲望を理解する能力を養った人々。③自分の行動の将来の結末を考慮する能力、リスクと報酬を評価する能力、自分がした仕事の成果について責任を持って説明できる能力を持つ人々。
OECDが提案するカリキュラムの設計原則も興味深い。①カリキュラムは学生に刺激を与え、事前知識、技能、態度、価値観を認識するように、学生の状況に対応してデザインする必要がある。②学習の深さと質を確保するために、各学年には比較的少数のトピックを導入すべきである。③学生にはさまざまなトピックとプロジェクトのオプションを提供する必要があり、また、独自のトピックやプロジェクトを提案する機会も提供するべきである。④学習体験を現実の世界に結びつけるために、学問領域ごとの知識の習得のほかに、学際的で協調的な学習が必要になる。
OECDはカリキュラムの柔軟性を主張する。
「カリキュラム」という概念は、「あらかじめ定められた静的なもの」から「適応可能かつ動的なもの」に発展すべきである。学校や教員は、変化する社会的要件や個々の学習ニーズを反映して、カリキュラムを更新し調整できなければならない。
わが国では初等中等教育の学習指導要領はおよそ10年に一度改正されてきた。しかし、科学知識が爆発的に拡大するとともに複雑な社会問題が増加する時代には、10年に一度ではなく、不断の改善が求められるようになるだろう。
OECDの今回の文書は途中経過であり、今後さらに磨かれていくそうだ。