「井上ちゃん、今日は歴史的な日だよ。幸田駅前の道路が狭くて、渋滞が多かったけど、j住居や店舗の移転補償をして、電信柱を移して道を広くする。今、その工事をちょうどやっているんだ。30年越しのDENSOとの約束が実現できた。」
と、語るのは昨日(3月30日)、役場を退職したばかりの志賀幸弘(しがゆきひろ)さん。用地買収、区画整理、企業誘致一筋30年のベテランだ。
幸田町(愛知県)は、農地などの用地買収を迅速に行うことで、昭和62年(1987年)にDENSOの電子制御製品の大型工場の誘致に成功。幸田町のDENSOの工場だけで、他の県全体の工業出荷額を超える約2兆円の売上高を誇る。
法人住民税や固定資産税、住民税が充実した幸田町は、平成元年(1989年)から30年連続地方交付税の不交付団体だ。
「まちづくりは、最低30年を見据えなければならない。そういう公務員を育てることがが重要。」と、志賀さんは力を込める。
工場ができた当時は、町内に、DENSOの課長クラスが住むところがほとんどなかった。そこで、志賀さんが中心となり、町内の用地をまとめて区画整理を行った。280戸を分譲。トヨタホームの先駆けとなった。
「この6年で8社を誘致した。町内の企業の拡張にも力を入れた。この工場は、強度があり、かつ、透明度があるプラスチックをつくる技術に優れていて、今、非常に業績が伸びている。工場や駐車場を拡張できるよう、用地買収に力を入れた。企業のスピードに合わせることが何より大事だ。」
「地元の住民を説得するのは、お金だけではない。幸田町のためだよということをしっかり伝える。そして、ストーリが大切。息子さんがこの会社で働けば、東京や名古屋に出ていかなくて、ずっと一緒に暮らせるよ。」と、よく口説いたそうだ。
そして、企業には、「まず、あそこの息子さん雇おうよ」
と声をかける。
住民と企業のつなぎ役が、行政の役割だと自負する。
姉妹都市の島原市(長崎県)は、志賀さんや幸田町のノウハウを学ばせるため、若手職員を1年間派遣。今後の島原市の展開も楽しみだ。
<井上貴至 プロフィール>
<井上貴至の働き方・公私一致>
東京大学校友会ニュース「社会課題に挑戦する卒業生たち」
学生・卒業生への熱いメッセージです!
<井上貴至の提言>
間抜けな行政に、旬の秋刀魚を!
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2018年4月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。