神保町「いもや」のように、昔ながらのサービスと商品を良心的な価格で提供している「老舗」が、家族経営による高齢化と劣悪な労働環境で、次々に撤退しています。そんな中、商品の価格を上げて、商品数を減らし、ネットで販売しないという「逆張り戦略」で大成功を収めているお店も存在します。
新宿御苑にある「ケンズカフェ東京」(写真)の特撰ガトーショコラは、3000円という高価格にも関わらず、日本一との評判で全国から顧客が押し寄せているそうです。
このお店は実は、当初はイタリアンレストランだったのが、デザートのガトーショコラが評判になって、今では販売しているのは、ガトーショコラだけ。しかも、当初よりも量は半分になり、価格は1000円台から2倍に値上げ。実質的には当初の4倍の価格で販売しています。しかし、今の高価格の方が売れるというのです。
さらに、以前やっていたネット販売も止めてしまい、本店と一部のデパートでの限定販売だけに特化しています。
驚くべきことに、特別なレシピや隠し味を使うこともなく、作り方はサイトで公開されています。誰でも作ることができますが、ケンズカフェ東京のガトーショコラの特徴は、小麦粉を使わないルテンフリーで、チョコレート、バター、卵、グラニュー糖だけで作っていること。全ての材料に妥協なく、最高品質の素材を惜しげ無く使っています。
販路を広げ、価格を下げて、バリエーションを広げ、秘伝の味を楽しんでもらうという、一般的な老舗とは真逆の戦略。販路を絞りこみ、価格を上げて、商品を1つにして、素材の圧倒的な力で最高品質の商品を生み出す。
これは飲食に限らず、すべてのビジネスに通じる戦略だと思います。
顧客が集まらないビジネスには「商品としての価値」が不足しています。自分にしか提供できないオンリーワンの商品・サービスが提供できないから、売上につながらない。そこで、販路を拡大しようとしたり、価格を下げてみたり、あれこれ手を出して新しい商品ラインアップを作ってみたり迷走して、さらに泥沼に落ち込んでいくのです。
その前にやるべきことは、自分にしか提供できない価値がどこにあるかを徹底的に突き詰めて考えることです。それを深掘りすることで、他には提供できない商品・サービスが生まれます。
大切なのは「脱・横並び」です。
手前味噌になりますが、6月から第7期を開催する新・資産設計戦略<資産設計実践会>は、資産運用の網羅的・実践的な知識と情報が得られる日本で唯一の講座ということで、継続率が30%を超える人気講座になりました。毎回、講座内容をブラッシュアップし、価格も上げていますが、参加者の満足度は回を追うごとに高まっています。
人と同じ土俵ではなく、オリジナルな価値を提供できれば、価格競争に巻き込まれることは無くなります。品質を極め、「ここでしか手に入らない」という価値を提供することに集中できるようになります。
値上げしても売れるものを商品化すれば、高い顧客満足度によって、口コミで次々と広がっていく。商売の基本は、全てに共通するシンプルなことなのです。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年4月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。