「何でも反対」「何でも賛成」の国会を変えるために

会期末をめぐる攻防の原因

国会も終盤に入り、緊迫感が増してきています。

ただ、この緊迫感は、「会期不継続原則」を採用していることによって生み出されているものです。

現在の国会法は、「会期中に議決に至らなかった案件は後会に継続しない」と定められており、会期内に議決されなかった法律案は、継続審議の手続きを行わない限り、審議未了で廃案となります。

ですから、一年中国会を開くこと(通年国会)にして、会期制をやめれば、廃案をめぐる会期末の攻防はなくなります。

いたずらに対決型の国会にしないため、この「会期不継続原則」を変えるべきとの国会改革案は、これまで何度も提案されてきました。

その他にも、改革の提案があります。

与野党双方への批判

今国会でも、森友学園、加計学園の問題がなかなか収束の気配を見せませんが、国民の皆さんの目に映るのは、

情報も参考人も出さない政府・与党

国会に出ない野党

であって、冷めた目線が、与野党双方に向けられていると思います。

まず、野党についていえば、

野党は反対ばかりしている

審議拒否はけしからん

こうしたご批判を、よく聞きます。

一方、野党時代の自民党も、「審議拒否」や「プラカード作戦」をやっていました。

逆に、その時、与党だった民主党は、いわゆる「強行採決」をやっていました。

つまり、現在の国会の制度やルールが、

ときの与党が「強行採決」を、

ときの野党が「審議拒否」や「プラカード作戦」を、

取らざるを得ない状況を生み出しているとも言えます。

国会審議にもイノベーションを

「○○党や××党がけしからん」ではなく、その○○党や××党が「けしからん」ことをしなくてすむような国会改革、あるいは、国会審議のイノベーションが必要です。

実は、こうした議論は、これまで何度も行われてきました。

有名なのは2011年1月の超党派議員による国会改革勉強会「通常国会に向けた具体的提言」です。

現外務大臣の河野太郎衆議院議員も含む4党17名が議論に参加しています。

今、読んでみても賛同できる部分が多い内容ですが、結局、実現しないまま、今日に至っています。

政局的な対立に巻き込まれ、なかなか建設的な議論にならないのが現実です。

実現のためには、野党側の協力姿勢と同時に、与党側にも、野党側の提案を懐深く受け入れる寛容な姿勢が不可欠です。

今のままでは、政治不信だけが高まることになります。

改革すべき点は多いと考えますが、特に、以下の二つは、ぜひ実現したいものです。

自民党でも若手が中心となって、国会改革の議論を行っていると聞いています。建設的な議論ができればと思います。

党首討論を毎週よる8時に

まず、党首討論を毎週夜8時開催することです。

昨年は党首討論が一度も開催されませんでしたが、開催時期やペースそのものが、与野党の政局的な思惑によって左右されます。

まず、こうした現状を改め、定例開催することをルール化すべきです。

また、討論時間がトータルで45分というのも、今のように野党の数が多くなった時代には、柔軟に見直さなくてはなりません。

さらに、党首討論とは、本来、与野党のトップが国家の基本政策を議論する場なのですから、多くの国民がリアルタイムで視聴できる、例えば「毎週夜8時に」実施してはどうでしょうか。

そうすれば、若い人の政治への関心も高まるでしょう。なお、こうした提案は、2011年の提言でも提起されています。

議論活性化のために党議拘束を緩和

次に、党議拘束を緩和することです。

今の国会が“おもしろく”ないのは、多くの法案で、審議が始まる前から賛否が決まっているからです。

「野党はなんでも反対」という批判もありますが、一方で、「与党はなんでも賛成」になっているのが実態です。

イエスとノーが最初から決まっている議論など、“おもしろい”はずがありません。

また、野党が官僚を呼んで行う「野党ヒアリング」について、国会の外で役人を詰問するようなことをせず、国会の中で堂々と議論せよ、との批判もあります。

与党も国会外で官僚を呼んでヒアリング

ただ、実は与党の側も、国会の外で「与党ヒアリング」を行っています。

典型が、自民党の各部会などが官僚を呼んで行う、閣法(内閣提出法案)の事前審査です。

この自民党の事前審査を経ないと、法案を国会に出せない慣行になっているため、官僚諸君も、必死で説明に日参します。

時に、国会議員からひどく叱責されることもあります。

いずれにしても、こうした事前審査と、それに伴う党議拘束が、国会の審議を形骸化させる大きな原因の一つにもなっています。

したがって、国会の議論を実のあるものにして、行政に対する国会のチェック機能を強化するためには、与党が拘束力のある事前審査をやめるとともに、与野党がともに党議拘束を柔軟にして、賛否や法案修正を、国会における審議に委ねるようにすればいいのです。

イギリスでは党議拘束に強弱がある

例えば、英国議会では各党が法案を党議拘束の強弱によって分類し、その都度、議員個人の判断を問うことをしています。

議員個人も、自ら考えに基づき賛否を判断しなければならなくなり、個々の法案について知識や見識を深めることにもつながります。

なお、わが国においても臓器移植法のように個人の思想信条、倫理観に委ねられるべき法案の場合に討議拘束を外した例もあります。

閣法・議員立法問わず、討議拘束のしばりを緩和することを認め、国会の中における議員同士の政策論議が、活発に行われる環境を整備してはどうでしょうか。

なお、昨年の総選挙以降、与党の質問時間を増やせという議論がありますが、今のように、党議拘束を厳しくかけながら、与党の質問時間を増やすのは、単なるパフォーマンスに終わってしまいます。

もし、与党が事前審査を止め、党議拘束も外して、ガチンコの議論を国会で行うのであれば、与党の質問時間を増やすことにも意味が出てきます。

先日、国民民主党は、党内に「政治改革・行政改革推進本部」を設置しました。

今後、具体的な議論を深めていく予定ですが、「対決よりも解決」を、制度上、実効性のあるものにするためにも、前向きな国会改革の議論を進めていきたいと思います。


編集部より:この記事は、国民民主党共同代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2018年5月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。