スウェーデンと高齢者への革新的対応策に取り組む

Tony Webster/flickr:編集部

今年は日本とスウェーデンが外交関係を樹立して150年目の記念年である。その記念事業として、高齢社会に対応する両国共同研究シンポジウムが6月13日にスウェーデン大使館で開催された。僕はこの共同研究にアドバイザとして協力しているので、シンポジウムに参加した。

冒頭はRobach大使による挨拶。文化も制度も異なる二か国間で産・官・学・民が協力するという挑戦的な共同研究枠組みの価値、そして高齢化社会に関わる研究開発に取組む意義が強調された。また、その後に講演したスウェーデンVINNOVA(研究開発資金配分組織)は、両国大学間だけでなくベンチャも知識交流に参加することで世界規模でのイノベーションを起こしていく可能性を強調した。

挨拶するRobach駐日大使

共同研究1:「国際連携型リビング・ラボ」の創設。オープンイノベーションの基盤として、実消費者が製品試験を実施する実生活に近い環境(リビング・ラボ)の構築が目的。実消費者である高齢者のニーズに対応した製品・サービスが開発され、雇用や社会参加に利用されるのが目標である。

共同研究2:自立高齢者を増やす食品提供システム。嚥下障害で栄養失調にならないように、高齢者に革新的な食品を提供しようというプロジェクト。栄養に配慮した噛み応えのある弁当を体操仲間と食べることで体脂肪が減少し咀嚼力が増したという。このシステムは高齢者が虚弱化していくのを予防する効果がある。

共同研究3:虚弱な高齢者の自立的な生活を支えるロボット。老人ホームなどでの給食は介護者にとって負担だが、食べ物を口に押し込まれる高齢者にも不満がたまる。食事を助けるロボットが開発されれば高齢者も介護者も助かる。ロボットは嚥下の速さにも配慮するし、どれだけ食べたかも自動的に記録する。

共同研究4:脈拍などの生体情報を連続的に検出するシステムのため、皮膚に張り付けて使うセンサを開発するプロジェクト。皮膚の曲げ伸ばしに耐えるセンサは、高齢者だけでなく保育園での園児のモニタなどでも利用できる可能性がある。汗を検出するセンサも開発中だそうだ。

四つの共同研究はそれぞれ個性的で、成果が高齢社会で利用されるようになるように期待する。また、先日参加したフィンランド大使館でのセミナーと同様に、高齢社会に対応する研究開発への期待が高まっていると感じることができた。