目標設定なしで「見切り発車」のメダルプロジェクト、やはり苦境に

音喜多 駿

写真AC:編集部

こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

ヤフーニュースのトップに、下記の記事が掲載されておりました。

東京五輪「銀」メダル不足? 機運醸成へ中央省庁で回収リレー(産経新聞)

スマートフォンなどの未使用小型家電を回収し、中に含まれている金属をリサイクルして五輪メダルをつくる「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」。

このリサイクル家電の回収状況が芳しく無く、「銅」以外のメダルについては見通しが立っていない状況です。

本件は先に行われたオリパラ特別委員会で質疑に取り上げておりまして、そもそもの問題点として明確な数値目標(回収目標数)が定められていない、ゆえに達成度が測れない点を指摘しました。

オリンピック・パラリンピックに必要な合計5,000個のメダルを作るためには、金42キロ・銀5300キロ・銅2700キロが必要と試算されています。

回収対象の中心となるスマートフォンなどに、それぞれどれだけ含有量があるのかを調べて、おおまかな回収目標数を立てることは十分に可能だったはずです。

しかしながらこの目標数が立てられていないので、外から見ると達成度がまったくわからないという状況が続いています。

この数値目標について取り上げて質疑をしたところ、委員会での答弁は以下の通りでした。

メダルプロジェクトのために協力いただいた小型家電の回収量は、都庁舎での回収が、先月27日に10万個を超えたところ。この他、ドコモショップにおける携帯電話の回収が約270万台、自治体における小型家電の回収が 約9千トン。

達成状況については、今後、各金属の製錬が本格化するのに合わせて、抽出した重量が明らかになることから、その段階で、把握・公表

…ずいぶんと悠長な計画だなと感じざるを得ません。

そして都庁で「回収数10万台突破!」等と喜んでセレモニーをやっていましたが、一説によればスマホに換算するとその回収必要数は2,000万台との報道もありました。

そうだとすれば、10万台で喜ぶことにはかなりの違和感があります。

そもそも民間企業であれば、当然にこうしたプロジェクトを行うときは、

・必要数を満たすためには何台の家電(スマートフォン)が必要なのか
・日本全国に、未使用で眠っている家電は何台あると推測されるのか
・そのうち、どれだけの割合を回収できれば目標を達成できるのか

こうした数値を検証し、目標設定をするのは当然のことです。

目標台数がないのですから、そもそも現実的に達成可能であったのか、現状ではどの段階にいるのか、検証することすらできません。。

さらに、「リサイクル率100%を目指す」とぶち上げているのは良いものの、万が一目標数に満たずメダルをいちから作ることになった場合に追加コストがいくらかかるのか、いわゆる「コンティンジェンシープラン」もまったく策定されていません

このあたりにも、プロジェクトの見通しの甘さや危機感のなさが現れています。

どうにも今回の「リサイクル率100%」といい、苦境が予想されているボランティア数といい、現状と目標がかけ離れている印象が否めません。

大きな目標だけではなく、細かな前提や数値目標が検証・設定されていなければ、達成できないのは当然のことであり、目標未達となれば新たな追加コストが発生することは確実です。

「見切り発車」でスタートしてしまったメダルプロジェクトですが、現在の進捗状況を速やかに公表し、「あと◯◯台」として国民・都民に協力を仰いだ方が効果的なプロモーションができるはずです。

「行政は数値に弱い」

を地で行く結果になりつつあるプロジェクトですが、少しでも軌道修正が行えるよう、引き続き議会から提言を続けてまいります。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年6月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。