地方には外国人観光客を魅了する“クールジャパン”がある

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

「クールジャパン、クールと思っているのは日本だけ」

そんなコメントをよく目にすることがあります。「日本の観光名所」「世界が称賛した日本人の行動」といった日本称賛のテレビ番組に辟易している、というネットユーザーをよく目にするようになりました。クールジャパン施策の苦戦について、レコードチャイナが次のように取り上げています。

クールジャパン機構が44億円を出資した海外向けテレビ番組事業の「WAKUWAKU JAPAN(ワクワク・ジャパン)」は過去2年で40億円近い赤字を出し、海外向けにサブカルチャーコンテンツを発信する「トーキョー・オタク・モード」やアニメコンテンツなどのECサイト「アニメ・コンソーシアム・ジャパン」も当初の予想を超える赤字となっているという。

引用元:レコードチャイナ「日本の「クールジャパン」はなぜ全然クールじゃないのか―華字メディア」

その一方で訪日外国人数は右肩上がりになっていたりして、「何だよ、日本めちゃめちゃ人気じゃん」と思うこともあります。「ジャパンは彼らから見てクールなのか?そうではないのか?」今回はそんな「最近のクールジャパン事情」について考えてみます。

伸び続ける訪日外国人数

「クールジャパンコンテンツ」と一言でいっても、日本を紹介する番組やアニメコンテンツだけではありません。日本という国を観光する「旅行」もその一つに挙げられます。アニメコンテンツなど苦戦が報じられているものもある中、日本への旅行についていえばまさに空前のヒットといっても過言ではないと思います。

東京オリンピックを間近に控えて世界から注目が集まっているということもあって、訪日外国人数はまさに右肩上がりに伸び続けていることをデータが示しています。

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2011年の東日本大震災直後は落ち込みを見せましたが、その後は急増しています。直近でも2016年から2017年までで20%も増えていますから、まさに「怒涛の勢い」と表現しても差し支えないのではないでしょうか。

この内、トップの中国人は735万人、ついで韓国人の714万人、合計で1449万人を占めています。韓国、中国、台湾、香港、タイといった日本から近隣のアジア諸国で全体の77%を占めています。

つまりは、観光におけるクールジャパン施策は成功しており、また、その伸長はひとえにご近所の国々によってもたらされているという状況が見えてきました。

日本に来た彼らは満足しているのか?

観光庁の行った調査によると、日本に旅行へ訪れた外国人の満足度は総じて高く、日本に

「必ずまた来たい」
「また来たい」

と回答した割合は計93.3%をマークしています(2016年10~12月期「訪日外国人消費動向調査」)。

翻って、不満を感じている点としては

「英語が通じない・英語の表示が少ない」
「クレジットカードが使える店が少ない」
「Wi-Fiが使えるところが少ない」

といった点があるようです。

また、今回の意識調査の他にも外国人観光客が抱えている不満として「荷物を預けにくい」というものがあります。この問題について、詳しくは以前に書いた記事、JA・道の駅の「荷物お預かり」で地方活性化になるか?にて取り上げています。彼らの中には訪日した際の荷物を預ける場所に苦労する「荷物お預かり難民」がいるのです。

まだまだ課題はありますが、訪日外国人数は増えており、多くの人は満足しているという結果を見ると「観光におけるクールジャパン」はうまくワークしているというのが結論として言えそうです。

日本への旅行の醍醐味は都会ではなく地方にある

さて、ここからはデータを用いた指標ではなくあくまで主観的意見になるのですが、海外旅行の醍醐味とはすなわち、地方観光にあるのではないでしょうか?そして日本の場合においてもそれは例外ではなく、日本の旅行におけるコンテンツの魅力は地方にあると私は考えています。

都会は大体世界のどの都市へいっても大きく変わることがありません。高級ブランド街があり、交通網は鉄道であり、世界中の料理を提供するレストランが軒を連ねる、という具合です。

私自身、過去にヨーロッパやアメリカの都市へ観光をしたことがありますが、どこへいっても人々はスターバックスでコーヒーを飲み、マクドナルドでハンバーガーを食べ、ルイヴィトンやシャネルを見て回り、といった行動様式は変わらないという少し退屈な実感を持ちました。

反面、その国の真の面白さが宿るのはなんと言っても地方観光です。日本でいえば野生の猿が遊びに来る温泉や、大好きな日本のアニメに出てくるシーンそのままの「聖地」を巡礼、そして果物狩りといったものです。

「モノ消費からコト消費へ」といったワードが各メディアで報じられていますが、世界中どの都市でもあまり代わり映えのしない都会より、日本の地方でしか体験が出来ないコト消費に多くの外国人からの熱い眼差しが向けられているのです。

黒部ダムへいくと、外国人観光客のあまりの多さに驚かされます。日本人にとっても簡単には行きづらい地方への観光でも、彼らはわざわざ海の向こうからやってきて楽しんでいるのです。日本の地方に眠る魅力、それはもしかしたら日本人以上に彼らの方が理解しているのかもしれないと思わされるほどです。

日本の高品質フルーツの果物狩りが大人気

地方でしか楽しめない観光といえば「果物狩り」です。実は果物狩りが今、外国人観光客に受けているのです。

果物狩りというアクティビティは日本に限った話ではありません。アメリカやオーストラリアといった国でもオプショナルツアーとして催行しています。が、利用しているのはもっぱら地元の人たちや自国の観光客が多く、他国からやってくる観光客に対しては今ひとつふるわないようです。

しかし、日本の果物狩りはまさに「クールジャパン」と呼んで差し支えない日本ならではのコンテンツパワーを秘めており、外国人観光客から高い人気を博しています。「日本の果物は高品質。値段は高いがおいしい」といった評判は世界で広がっています。

また、日本から輸送する代金が含まれていることもあって、自国ではなかなか手が出ない日本産のフルーツがお手頃価格で食べられるというオファーが、彼らにとても魅力的に映っているようなのです。

さらに、日本の果物狩りは自分で収穫し、その場でいくら食べてもいい「食べ放題プラン」がスタンダードです。これは他国ではあまり見られないスタイルです。

SankeiBizの6月30日の記事によると、フェイスブックやブログで体験談が広まり、また果物農園自身の海外旅行会社へのPRも成功したことで、「筑紫野いちご農園」では2017年11月~2018年5月のシーズンは2年前の1.5倍超の約4200人の訪日客が立ち寄ったとあります。

そして、熊本県の果物農園でも、熊本県内の農園や農林中央金庫などと組み、海外のブロガーや記者を招くモニターツアーを実施するなどPRに奔走しています。

果物狩りを始めとした、地方ならではのコンテンツを積極PRすることで、外国人観光客に「クールジャパン」と言わしめることが出来るのではないでしょうか。日本人からすると当たり前のように思える娯楽も、彼らにとっては驚きを持って迎えられるものは少なくないと思います。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。