私が広報マンだったころ メディアと片手で握手、片手で殴る

常見 陽平

ビジュアル系だった頃の写真が出てきた。これはオフショット。髪をコテで伸ばしているという。OASISのリアム・ギャラガー風?代官山のHi-STANDARDで買ったAdidasのレア物2本線ジャンパー。

これは、広報担当者だった頃の写真でもある。当時、トヨタとリクルートの合弁会社、OJTソリューションズの立ち上げに関わっており。縁もゆかりもない名古屋で奮闘していた。

その当時のことを盟友・中川淳一郎が記事にしてくれた。

トラブルを次々解決──中川淳一郎氏が出会った優秀な「広報マン」の仕事ぶり | マネーポストWEB 

目頭が熱くなった。まるでデキる社員みたいだけど、いや、実際、全部本当の話なんだな。うん。あの頃は会社員として真面目に仕事をしていたのだよな。

当時、広報マンとして心がけていたのは、メディア関係者には「気持ちよく取材をしてもらう」こと。その環境作りというか、舞台作りにはこだわっていたかな。どんどんと素材を出す、という。

一方で、「片手で握手して、片手で殴り合う」という仕事のスタンスが身についたのもこの頃で。要するに、自分たちの会社を取り上げてくれるのはありがたいけれど、それは事実とは違うでしょ、切り口としておかしいでしょ、みたいなこともあるわけで。

幼い頃から20歳くらいまでは、ジャーナリストになりたいと思っていたのに、なぜか普通の会社員になったわけだけど。メディア関係者と接する日々の中で、彼らの駄目な部分も間近で見聞きしたのは良い機会だった。本当、全国紙の記者から「日経に載った記事と同じ話をこの場でしてくれ」とオーダーされたのはびっくりしたなとか。夕刊紙がまったく取材せずに記事を書いたのにも閉口したな。

どうやったら、気持ちよく書いてもらえて、かつ自分たちにとって有利な露出になるかを考えた2年間だった。自分の人生にとって役に立っているというか、この時の体験で食べているかな。

今どきの広報担当者は、媒体をコントロールしようとしすぎたり、逆に仲良すぎたり。首をかしげることがよくある。片手で握手して、片手で殴り合うスタンスを大事にしてほしいな。

無駄な経験なんて一つもないのだ。うむ。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年7月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。