先日、フランス大使館にて、「ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本特別賞」という大変栄誉あるアワードを頂きました。
受賞された若手女性科学者の皆さんと
僕は女性でも科学者でもないのですが、この賞は「2010年に創設され、科学をはじめ教育の分野への夢と希望を多くの人々に与えるとともに、社会的発信力があり、次世代のロールモデルとなる個人または団体を表彰」するものだそうです。
本当にありがたいです。
さて、このイベントにおいては「ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」という、卓越した若手の女性科学者を表彰するアワードもありました。
そこで聞いたことで、耳を疑うことがありました。
優秀な女性科学者が、保育園に入れない
公益法人がん研究会研究員の大西なおみさんは、こう仰います。
日本学術振興会(学振)の特別研究員という、優秀な科学者の登龍門のような制度があります。
特別研究員は研究に専念するために学振から給料と研究費を支給してもらえます。しかし、学術振興会との雇用関係は無いという制度のため、社会的には極めて弱い立場に。社会保障もない、各自で国民年金と国民健康保険に加入、産休や育休は研究中断という手続きになり、その間は完全に無手当です。
そして、雇用関係がないので、保育園入園に求められる勤務証明が得られず極めて不利になってしまいます。
私の友人は実際に保育園に入れず、研究を一時的にストップせざるを得ませんでした。さらにその間は生活費も完全に途絶えるため精神的にもとても厳しかったと言います。
高い教育を受けた科学者が置かれている社会的立場は厳しいものがあります。このようなことは女性科学者の意欲低下に繋がると考えられ、なんという損失なのだろう・・・と感じた次第です。
まとめ
現在、世界でも研究者に占める女性の比率はわずか28%にとどまり、科学分野のノーベル賞受賞者のうち女性はわずか3%に過ぎません。
日本はというとそれに輪をかけて酷く、研究者全体に占める女性の割合は15.3%(これでも過去最高)で、さらに意思決定権を持つ教授や学長における女性の割合は一層低く、主要国と比較し最下位の地位に甘んじています。
資源のない我が国はイノベーションで食べていかねばなりません。そのイノベーションを生み出す女性科学者が、社会的保障もなく、ポイントが低くて保育園にも入れないという仕打ちを受ける、というのは全くもってあってはいけないことだと思います。
ぜひ、政府は成長戦略というのであれば、女性科学者・研究者の方々の子育てと研究の両立支援に、力を入れていただきたいと思います。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年7月24日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。