7月31日に日銀が決定した新たな政策については、少しわかりづらいものとなっているので、あらためて解説してみたい。
今回の日銀の決定会合の公表文のタイトルは「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」となっている。これについては、あくまで今回の政策は緩和強化にあるとの見方と内容は副作用の軽減化策ではないのかとの見方に分かれる。緩和強化というのはフォワードガイダンスを導入することからも確かであり、緩和を続けるとの意志の現れだが、なぜか消費増税が出てくる。消費増税が景気物価に悪影響を及ぼすからとの見方がある一方、消費増税は物価にそれほど影響あったか疑問視する声も出ている。
イールドカーブ・コントロールについて内容はこれまでと同じ。ただし、金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動、と付け足されている。0.1%だろうが0.2%であろうが、ゼロ%程度に変わりない。ここは債券市場の機能回復を目的としたものと言えるのではなかろうか。
マイナス金利が適用される政策金利残高については」長短金利操作の実現に支障がない範囲で、現在の水準から減少させる「現在の水準の平均して10兆円程度から5兆円程度にする。短期金利の誘導目標はマイナス0.1%から変わってないものの、今回の措置は短期金利を多少なり引き上げるようにも思える。
そして、ETFの銘柄別の買入れ額を見直して、TOPIXに連動するETFの買入れ額を拡大する。購入する銘柄が偏るのを防ぐことが目的で量を減らすのが目的ではないように見える。しかし、長期国債以外の資産の買入れは市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとするとある。状況に応じて減らせる仕組みにした。もちろん増やす選択肢もあるが、株式市場関係者からも日銀のETF買いは株価形成を歪めているとの見方も出ている。
そもそも今回の政策は、あくまで強力な金融緩和継続のための政策であるが、内容をみると枠組み柔軟化のようにも見える。様々な不確実性を考慮して、現在の政策を維持していくのが目的だが、今回の修正は、債券市場の機能が低下してしまったことが大きな要因となる。しかし、長期金利目標値のゼロ%を引き上げることが目的ではない。それでも0.1%から0.2%に許容範囲を引き上げたが、そのあたりは誤差範疇で政策の効果には影響ないかもしれない。
そもそも今回の長短金利操作付き量的質的緩和政策(改ニ)で効果が出るのか。物価上昇のモメンタムに変化はないと日銀は主張しているが、コアコアCPIなどをみると、モメンタムを感じない。それでも雇用は改善して、景気拡大は続いている。それは世界経済の回復による影響が大きく、異次元緩和はどこまで効いているのか。日銀の大胆な緩和策がなければ、景気はもっとひどい状態に陥っていたとの見方もあるが、何もしなくても日本の景気は回復していた可能性も高く、副作用が拡大しただけではないかとの見方もある。このあたり話が噛み合わない。その噛み合わなさが、今回の政策修正をわかりづらくさせている
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年8月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。