こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
昨日はマイナンバーカードとブロックチェーン技術を用いて、日本初となる仕組みで「ネット投票」を行う茨城県つくば市に視察へ行って参りました。
国内初!ブロックチェーンとマイナンバーカードを活用したネット投票を実施します!(つくば市HP)
ネット投票の実現目指し実証実験(NHK)
市長や議員を選ぶ「選挙」でネット投票を行うわけではないものの、市が募集する支援事業に応募してきた各企画に対して、市民によるネット投票で評価を行う試みです。
メインとなる実際の投票日は8月28日ですが、期日前投票が昨日からスタートし、五十嵐つくば市長によるデモ投票も行われました。
端末の前で「マイナンバーカード」をカードリーダーに認識させて、
マイナンバーカード申請時に登録したセキュリティーコードを入力して、投票したい企画を選んでクリックしたら投票完了!
ものの数十秒で終了し、もちろんデジタル化されていますから集計も簡単で、集計ミスが発生することもありません。
エストニアでも実際のネット投票画面を見たことがありましたが、それよりもさらにシンプル&スピーディーだったように感じました。
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今回のつくば市によるネット投票の何が画期的なのかというと、マイナンバーカードとブロックチェーン技術を用いることにより、これまで「ネット投票の壁」となっていた課題をクリアした点です。
これまでネット投票においては、
・本人以外のなりすまし投票
・投票結果の恣意的な改ざん
という懸念点が、解決不可能な重要課題として挙げられていました。
しかし今回のつくば市の試みでは、マイナンバーカードで本人確認をすることで前者の「なりすまし」を防ぎ、改ざんが困難なブロックチェーン技術を導入することで、集計サイドが不正な操作をすることを防ぎます。
もちろん「マイナンバーカードが盗まれたり、脅迫されて使われたらどうする」とか、「ブロックチェーンがパブリック型ではなくクローズ型なので完璧ではない」など懸念のすべては払拭できませんが、それでもネット投票の可能性が飛躍的に高まったことは間違いありません。
このつくば市の取り組みが成功し評価されれば、各種選挙における「ネット投票」がついに実現し、大幅な行政コストの削減・投票率の向上が見込めるのはもちろんのこと、行政や民主主義社会にとってのメリットはそれだけに留まりません。
現在も行政はパブリックコメントやアンケートの実施などで、市民からの声を集めようと努力しています。しかしながら、現在の意見公募のやり方では本人確認ができませんし、重複した意見の投稿なども可能です。
よって「声の大きな人の意見」ばかりが集まりがちで、正確な市民の民意を把握することは難しい状態になっています。
しかしこの「一人一票」を確実に担保するマイナンバー&ブロックチェーン型の仕組みであれば、かなり正確な民意をネット投票で集めることが可能になります。
間接民主主義の欠点を補い市民の声を聴く「住民投票」は、現行制度では極めてハードルが高いものになっていますが、もっと手軽に・シンプルに「市民の声をリアルタイムで施策に反映する」ことができるようになるわけですね。
まさに「テクノロジーが政治と社会を変えていく」その未来が、すぐ先にまで来ていることが実感されます。
なお、東京都は昨年度からスタートした「都民による事業提案制度」でいわゆるネット投票を実施していますが、住所を入力すれば自己申告で投票ができるシステムで、正確性やセキュリティにまったく欠けていると言わざるを得ません。
こうした意見集約にこそ、今回の「つくば型」のネット投票システムは極めて有効であり、東京都は今年度からでもすぐに導入すべきだと強く感じるところです。
参考過去記事:
●あなたの一票で、都の政策が決まる!「都民による事業提案制度」ネット投票を受付中
●組織票で乗っ取られる危険性?!投票数が四千票余りだった「都民による事業提案制度」の課題
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なお、若き五十嵐市長&つくば市がここまでネット投票に強くコミットした背景の一つには、JAXA・宇宙飛行士の存在があるそうです。
つくば市といえばJAXAがあり、我が国の宇宙産業のほとんどが集積している聖地です。宇宙飛行士のほぼ全員がつくば市にご縁を持っている(在住?)とのこと。
さて、そんな宇宙飛行士は宇宙へと飛び立つと、宇宙ステーションへの滞在などで長期間に渡って地上から離れることもあります。
では、その間に選挙があったとしたら、宇宙飛行士の皆さまは投票できるのでしょうか??
答えは、残念ながらNo。
遠洋漁業者はFAX投票という救済措置があるにもかかわらず、宇宙飛行士は現在のシステムでは投票することができず、投票を諦めているのが実情だそうです。
もし今ある課題をクリアして、ネット投票が実現できれば…宇宙飛行士の投票も可能になるではないか。
宇宙飛行士すら選挙では必ず投票に行く。それこそ、民主主義の重みを表す象徴になるのではないか。
こうした強い想いが、市長たちの原動力になっていたというのは、なんとも夢やロマンを感じるところです。
※なおアメリカでは、すでに宇宙飛行士は「電子投票」によって選挙で投票可能となっている
ISSの宇宙飛行士、アメリカ大統領選挙に不在者投票 でもどうやって?
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もちろん、今回のつくば市型ネット投票にも、喫緊の重要課題は残っています。
それは「マイナンバーカードの普及率が低すぎること」に尽きます。
本人認証の精度としてはこの上なく高いマイナンバーカードですが、その発行率・普及率は今年春の段階で約10%。これでは投票できる人がかなり限られてしまうことになります。
今回のネット投票システムをつくった事業者も現在、他の方法でもマイナンバーレベルで本人確認を担保できないか模索中のようです。
ただその一方で、ネット投票にマイナンバーカードが必要な仕組みが広がることにより、それ自体がマイナンバーカードの発行を促すことも期待できます。
特に前述のように、人口が多い東京都がこのシステムを導入すれば、その影響力は無視できないものになるのではないでしょうか。
東京都の「都民による事業提案制度」への導入については、私も議会から積極的に提案していきたいと思います。
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そしてネット投票の他にも、イノベーション都市・つくばには勉強になることが目白押し!
というわけで、明日もつくばシリーズの記事が続く予定です。お楽しみに^^
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年8月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。