9月7日に発表された8月の米雇用統計では、非農業雇用者数は20.1万人増となり、事前予想を上回った。失業率は3.9%で前月と変わらず。そして、平均時給は前年比で2.9%増と2009年6月以来の高い伸びとなり、これを受けて9月25~26日に開催されるFOMCでの追加利上げがほぼ確実視された。
ただし、雇用統計がよほど悪化しない限りは、9月のFOMCでの利上げはほぼ規定路線となっていた。これにより2018年は3月、6月のFOMCに続いて3回目の利上げとなる。さらに今年は9月に加え、12月のFOMCでの年内4度目となる利上げも予想されている。
ただし、12月の利上げに関してはやや不透明な部分もある。米国のトランプ大統領は8月17日に共和党の資金集めのイベントで、あらためてFRBの利上げに不満を漏らしたとされる。トランプ大統領があからさまに利上げ阻止に動く可能性は少ないながらせも、11月の中間選挙の結果次第では米国の政局が変化してくる可能性もある。このため12月の利上げについてはやや流動的な面もあろう。
仮に12月に利上げがあったとすれば、今年は議長会見の開かれるFOMCすべてで利上げが決定されることになる。昨年までも利上げが決定されたのは議長会見のあるFOMCにおいてであった。
ただし、FRBのパウエル議長は2019年1月のFOMCから毎回、記者会見を開くと表明している。このため来年の利上げに関しては、3月、6月、9月、12月のいずれかというパターンからは外れることも予想される。その分、利上げ決定のタイミングについてFRBの自由度が増すような格好となる。
それではFRBはこれからあと何回利上げをする予定なのか。このままのペースが継続されると、2019年の2回程度の利上げで中立金利に到達することになる。ここでいったん利上げは終了となるとの見方が強い。
そもそも今回のFRBによる利上げは、米国の景気や物価の過熱を阻止するためのものではない。非常時対応ともいえた異常な金融緩和策から正常モードへの移行が目的となっている。現在の米国の物価をみてもインフレ圧力が強まっているようには見えず、正常化が達せられたのならば、いわゆる金融引き締めとされるゾーンにまで踏み込むことは考えづらい。
正常モードに移行したあとは、経済物価動向を見ながらの調節という本来の中央銀行の金融政策に戻ることが予想される。あまり糊代という言葉は使いたくはないものの、米国経済がピークアウトした際にもFRBは利下げという手段も取れることになり、これにより政策の自由度が大きくなることは確かである。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年9月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。