物価目標の2%という数字にそれほど固執する必要は本当にあるのか

19日に発表された9月の全国消費者物価指数は総合が前年同月比プラス1.2%となり、8月の同1.3%から伸び率が低下した。日銀の物価目標ともなっている生鮮食品を除く総合は同プラス1.0%となり、こちらは8月のプラス0.9%から伸び率が上昇し、今年2月以来の1.0%となった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合は0.4%とこちらは8月と変わらず。

総合の前年比伸び率が縮小したのは、生鮮食品による上昇幅が0.12ポイント縮小したことが影響した。台風などの影響により生鮮食品が値上がりしていたが、それが少し落ち着いてきたものと思われる。

それに対して生鮮食品を除く総合の前年同月比の上昇幅が0.1ポイント拡大したのは、ガソリン,電気代などの上昇幅が拡大したことで、エネルギーにより総合の上昇幅が0.05ポイント拡大、生鮮食品を除く食料、教養娯楽用耐久財(テレビ・音響映像機器・パソコン・カメラ・楽器・学習机など)、外国パック旅行費などが寄与していた。

原油価格のベンチマークともいえるWTI先物は9月に入り70ドル台を回復するなど上昇してきたことによるエネルギー価格の寄与が大きかった。教養娯楽用耐久財の寄与などは良い物価上昇の現れとも思われるものの、それでもコア指数は前年比でプラス1.0%に止まる。

価格変動の大きい生鮮食品及びエネルギーを除いてしまうと(コアコア)、前年比ではプラス0.4%に止まる。

これは日本の景気が悪化しており、それが物価に反映されているのかといえば、当然ながらそうではない。日銀がかなり無理な金融緩和を続けているものの、それが物価に反映されているようにも思えない。

18日の日銀支店長会議での黒田総裁の挨拶は次のような発言が冒頭にあった。

「わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる。」

景気は拡大基調にある。それならば何故物価はグローバルスタンダードの2%に距離があるのか。それは日銀の緩和策が足りないからなのか。現在の日本の景気に見合った物価が現在でも形成されているとの見方はおかしいのか。

物価目標の2%という数字にそれほど固執する必要は本当にあるのか。いまはデフレで危険な状態なのか。あらためて問いたいところである。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。