こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
一昨日の決算特別委員会の質疑対象は、病院経営本部。私からは都立病院の経営状態について確認した後、独立行政法人化を早急に進めるべきとの政策提言を行いました。
都内に8つある都立病院ですが、その経営は赤字が慢性化し、毎年約400億円もの赤字(一般会計からの繰入金)が常態化しています。
普通の地方自治体であれば、財政が逼迫してすぐに抜本的改革に迫られるところですが、そこは財政が比較的豊かな東京都だからと申しますか、問題解決が先送りにされ続けてきました。
こうした状況を見かねて、本年1月に都立病院経営委員会から「今後の都立病院のあり方について」が提出され、
「他の経営形態と比較して、一般地方独立行政法人が制度的に最も柔軟であり、今後の都立病院にふさわしい経営形態である」
ことがはっきりと明記されました。
また、本年3月に都政改革本部が策定した「2020改革プラン」においても、病院業務については「地方独立行政法人化制度」活用の対象業務となっています。
いくら東京都の財政に(現時点では)比較的余裕があるとしても、2025年以降に確実に訪れる超少子高齢化も踏まえ、毎年400億円もの赤字が常態化しているのは、持続可能性という観点から看過することはできません。
民間にはできない「行政的医療」を担うという役割はあるものの、高コスト体質になりがちな公立病院から脱却し、速やかに独立行政法人化に踏み切るべきだと私自身も強く感じています。
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そこで私は質問に先立ち過日、2014年に独立行政法人化をし、目覚ましい改革の成果を遂げている「大阪市民病院機構」に視察へと伺い、理事長を始めとする関係者の方々から2時間以上に渡ってお話を伺ってきました。
厳しい経営環境に置かれていた大阪市民病院は、独立行政法人に移行した後、新入院患者数・入院診療単価等が2割近く増加するなど、目覚ましい変化を見せています。
医業収益も2013年の290億円から、2017年には362億円になるなど72億円・25%の増加となったそうです。
お話をされていた独法化のメリットは多岐にわたりましたが、特に大きいのは予算・人事制度の柔軟化です。
これまで単年度予算で、議会承認が必要である予算が柔軟化されたことで、独立行政法人化された医療機関は必要な時に、必要な投資がしやすくなります。
また、公務員として厳しく規定されていた人員数や人件費も弾力化されるので、採用活動も臨機応変にできることになり、また報酬体型の見直しが経費削減のモチベーション向上の双方につながったと言われています。
現在、人件費が高止まりしている都立病院には、まさにこの改革が必要ではないでしょうか。
また、外部人材を登用した経営会議体の導入、職種ごとに権限委譲を行った組織体制の見直しなどを実現し、独法化前にはできなかったガバナンスの強化に成功したそうです。
独法化に反対する人々は時に「経営改善は、独立行政法人化をしなくてもできる!」ということを言いますが、独立行政法人化前から一貫して理事長・病院長を勤められてきた方が、
「こうした改革は、独立行政法人化をしなければ到底なし得なかった」
と述べていたことには、大変重みがあると感じました。
(大阪市民病院前にて、お話を伺った瀧藤理事長と)
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そもそも都立病院の独立行政法人化は、2007年度の都立病院経営委員会報告書においても、同様に独立行政法人化こそがふさわしいとの答申を得ていました。
にもかかわらず、経営形態の変更という抜本的な改革が先送りにされ、他の自治体に大きく遅れを取り、その間も年間約400億円という都民負担を継続してきた経緯があります。
今年の1月に再度報告書が出たことは良いことですが、またしても同じ「先送り」が行われないか、私は非常に危惧しています。
独立行政法人化を進めるのは勿論のこと、8つの大型病院を抱える都立病院は経営責任の明確化のため「一病院、一法人」として、8つの独立行政法人を設立することなども具体的に検討する必要があります。
こうした大きな変化については、最後は政治がリーダーシップを発揮して、スピーディーに推し進める必要があります。
大阪市での事例でも、最後は政治トップであった橋下氏と、現場のトップであった理事長・病院長が不退転の決意で現場と向き合ったそうです。都民負担が日々発生している現状においては、一刻の猶予もないと考えるべきです。
10年越しの報告書内容に則り、地方独立行政法人化の検討、そしてその実現を速やかに行うことを、引き続き議会から強く求めていきたいと思います。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、あたらしい党代表、東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出)のブログ2018年10月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。