本書はなかなか衝撃的な出だしからスタートする。
申し遅れましたが、僕の名前は西岡壱誠と言います。小学校のころから頭が悪くて、高校の合格ラインは偏差値50。歴代東大生排出数0人という無名校の学年びりで、高3のときの偏差値は35でした。
で、一念発起して東大受験をすることになった著者だが「箸にも棒にもかからず」「あっという間に2浪」してしまう。
で、入試問題を「くわしく分析」してみた著者は、ある発見をする。
東大はいくらがんばって「知識の量」を増やしても合格できない大学だったのです。というのは、東大には知識問題がほとんどありません。知識の量はあまり必要ない代わりに、最低限の知識を「うまく活用」できないと解けない問題がたくさん出題されています。
って、2浪するまで気づかなかったのかYO!
ともかく、そんな著者が全国模試で4位をとるほど劇的に成績アップし、見事に東大にも合格することが出来たという読書術について解説したのが本書である。
余談だが筆者自身はあまり「〇〇式〇〇術」みたいなのはあまり好きではない。本当に公式なものかわからないしブランドにおんぶにだっこな気がするからだ。
ただし、読み進めてみると「あーそういえば無意識のうちにやってるかも」という話がうまく論理的に説明されている。
感覚的に言うと、確かに東大レベルの人材なら本書の実践内容は無意識に60%くらいは行っているように思う。ただ、集中できずに「何度読んでも文章が頭に入ってこない」状態というのは誰にでもあって、筆者も試しにそんな状態で本書の指南どおりにいくつか実践してみたところすんなり頭に入ってきてちょっと驚いた。
そういう意味では、本を読むのが苦手な人や、苦手ではないけどよく集中力が切れて頭に入ってこないことがある、という人におすすめの一冊と言える。
仮説づくりから取材読み、整理読み等、本書の読み方のコツは複数あるが、要するに本書のメッセージは「自分の頭で考えつつ能動的に本と付き合え」という点につきる。本書を参考に、各人にあった読み方をするといいだろう。
ちなみに筆者がこうして書評を毎週一本は書く理由は、本書の以下の部分とまったく同じである。
そもそも感想とはいったい何なのでしょうか?何かを読んだり鑑賞したときに、「良かった」「悪かった」と言うだけが感想ではないはずです。読んだ内容、鑑賞した内容を噛み砕いて理解し、それに対して自分が感じたことを表明するというプロセスで、「感想」は生まれます。
それはつまり、「インプット」を噛み砕いて「アウトプット」をするという行為に他なりません。作品という「インプット」を得た上で、自ら何かを「アウトプット」したのが「感想」というわけです。
この「インプット」→「アウトプット」という過程の中で、理解は深まります。
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年10月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。