今週のメルマガ前半部の紹介です。
読書の秋ですね。先日の「東大読書」がなかなか興味深い内容だったので、触発されて今回は筆者なりの読書術をまとめておきたいと思います。
読書はキャリアデザインを進めるうえでも必需品ですが、忙しいビジネスパーソンにとって読書に回せる時間は有限です。いかに合理的に読むべき本を選び、効率的に読み、そして自身の血肉として蓄えるか。その方法を知ると知らないでは10年経ったら人材の差に大きなギャップが生じるはずです。
本の選び方
出版不況と言われ久しいですが、出版物の量そのものはむしろ増加気味です。自分の興味のある分野に限ってもとてもとても全部に目を通すのは不可能です。そこで、筆者は自分なりに考えたいくつかの基準で読む本を選んでいます。
1. 経済系の本は基本的に経済系の出版社のものだけ読む
意外と知らない人が多いんですが、経済全体を論ずるような本というのは、経済系の出版社から出されたものと一般の出版社から出されたものはまったく別物です。
前者は経験豊富な経済系の編集者が厳しく内容チェックしているので一定のレベルは保証されてますが、後者は「経済誌とか読んだことないっす。普段はラノベの編集やってます」みたいなのが送り出すのでほぼ完全にノーチェックで書棚に並びます。
角が立つのでいちいち言いませんけど「これホントに金とっていいの?」レベルの本とかいっぱい出されてますね。
ただ例外もあって、既に高名な大学の先生とか経済系の出版社から何冊も出しているような人であれば手に取ることもあります。
2. (書評で)信頼できるメディアや個人がすすめているものを読む
【参考リンク】日本人を縛りつける役人の掟: 「岩盤規制」を打ち破れ!
自身の好きなメディア、取り上げる本が実際に面白かったメディアで紹介されたものや、SNSやブログでフォローしている人が取り上げた本はなるべく目を通すようにしています。
筆者自身はメディアでいうと日経新聞、東洋経済、ダイヤモンドあたりを参考にしています。プレジデントも書評はなかなかいい筋してますね。
3. 最後は章立てを見てイメージする
そうはいっても書評にのらない本の中にも読むべき本は存在します。ではどうやってそれを見つけるか。最後は書棚やネットの試し読みで目次を見て内容をイメージしてから判断します。
【参考リンク】町工場の全社員が残業ゼロで年収600万円以上もらえる理由
タイトルは興味あるが釣りかもしれないし、よくある中小企業のオーナーの立志伝みたいなのだったらイヤだな……まあとりあえず目次でも見て見るか。
と思って開いてみると、すぐに前後の章の2倍以上のボリュームを誇る第二章がコアであることがわかります。テーマはずばり残業。そして最終項は「大事なのは『残業代込み』の給料にすること」となっており、もうこの時点で本書が目を通すべき良書であることは明らかです。もっとも重要なテーマがコア章のラストに掲げられているわけですから。
逆に、おすすめしない本の見分け方も紹介しておきましょう
1. 著者が年一冊以上のペースで出版している
出版不況の中、出版各社は出版数を増やすことで、とりあえず取次から当座の資金を確保することが出来ます。数か月後には売れ残り分が返品されてくればその分は返金しなければならないんですが、とりあえずまた新作を出版すれば先延ばしにできます。
要は自転車操業です。これが「出版不況なのに出版数だけは増え続ける理由」ですね。
というわけで、今では編集者に「一人、月5冊以上」みたいな無茶苦茶なノルマを課している出版社が多いです。そうなると少しでもネームバリューのある書き手のところには入れ代わり立ち代わり編集者が企画を持ち込んできます。で、こんな感じでごり押しします。
「前作をこういう風にアレンジして、こんな具合のタイトルで出版しませんか?お忙しいようでしたらライターはこちらで手配します。3時間ほど口述していただく形でもかまいません」
専業の作家ならともかく、本業のある人間が年一冊以上書くのはまず不可能です。ですからそういうハイペースで書いている人の本は中身を薄めたり以前の本をアレンジしただけのものなので、手に取らない方がいいです。読むならその人が評価されるきっかけとなった昔の本にすべきでしょう。
2. 読者に媚びている本
筆者が絶対に手に取らないタイプの本がこれです。お金を払って時間もかけて読む以上、それだけの価値が無いと意味がありません。価値のある情報というものは自分が持っていないものであり、往々にしてそれは耳に痛いものを含んでいます。
たとえばデブが「あなたは今のままでも十分ステキ、でも楽して痩せるダイエットがあるから教えるわ」っていう本と「おまえはまごうことなきデブだ。食事を見直しつつ有酸素運動もしろ」という本のどちらを金出して読むべきなのかは明らかでしょう。
あと「日本すげー」とか「韓国ダメー中国やべー」本もそうですね。本買って日本ってこんなに凄いんだってネタ仕入れてもあなたの価値が上がるわけではありません。中国や韓国のダメなところばかり知ってもあなた自身は何も変わりません。
経済本だと「バラマキで経済成長!」とか「日銀に国債買わせたから財政再建完了!」とかいうのがそうですね。デブに運動も食事制限も無しで楽して痩せる方法を売りつけて小銭巻き上げるのと同じ構図です。
以降、
読み進め方
本の中身を消化して吸収する方法
Q:「「担当業務への不得意」にどのように向き合うべきか」
→A:「まずは本当に不得意かどうか確認しましょう」
Q:「ポスト・モリタクをどう思います?」
→A:「21世紀にもなってまだこういう人いるのね、って感じです」
ショートショート「開き直り」
Q&Aも受付中、登録は以下から。
・夜間飛行(金曜配信予定)
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年11月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。