競争が不足するJICAの契約

行政事業レビューの報告第二回は『技術協力(JICA交付金)』。

政府開発援助(ODA)の一種に「技術協力」がある。相手国に適合した技術・制度を開発するのに必要な技術や知識を伝える事業である。実例を挙げると、インドネシアに対する情報セキュリティ能力向上プロジェクト、エクアドルに対する津波を伴う地震のモニタリング能力向上プロジェクトなど。

プロジェクト開始にあたりコンサルティング会社と契約するが、2017年度の場合、全217件のうち随意契約が73件、一者応札が84件だったそうだ。これだけでも競争性が欠如しているのだが、複数社が応札した場合にも価格はほとんど意識されていない。まず技術点で評価し、技術点の差が2.5%未満の場合だけ応札金額を開封して落札者を決めるというのだ。つまり技術点の差が2.5%以上あれば価格は不問である。その上、プロジェクト進行中には「モニタリング結果等を踏まえた計画通りの効果発現のための業務追加」といった理由での増額変更契約が横行している。

他の先進国ではどのように契約しているのだろう。JICAの説明では、技術点80と価格点20で落札者を決めるのが普通だそうだ。また、実行した業務量を積算して支払う成果報酬契約、途上国の不安定さを吸収するために予備費を含めて上限を定める契約、なども行われている。他国並みの契約方法に改善するのが当然で、JICAは技術点80と価格点20の総合評価方式への移行を約束した。

そもそも技術協力プロジェクトはわが国の国益に資するものでなければならない。そのベースとなるのが、外務省が作成する「開発協力重点方針」であり、国ごとに作成する「国別開発協力方針」である。しかし、タイやラオスに関する「国別開発協力方針」は2012年策定だそうだ。これで「自由で開かれたインド太平洋戦略」という「開発協力重点方針」に寄与する方針と言えるのだろうか。

中国が南沙諸島に軍事拠点を構築し始めたのは2015年、一帯一路構想の提唱は2014年である。国際環境が急激に変化する中、「国別開発協力方針」は五年ごとに改定することにしており、タイなどについても改定を準備中であるという外務省の返答はのんびりし過ぎ。

行政事業レビューの結論は、技術協力業務全般に見直しを求める強いものとなった。

報告第1回『スマホ連携もできない前時代的な政府統計調査