11月8日に開かれたFOMCでは、全員一致で金融政策の現状維持を決定した。つまり、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を2.00~2.25%のレンジで維持することを決定した。
これは市場でも予想されていたことで市場への影響は限られた。市場での注目は12月のFOMCで予想通りの利上げが実施されるかどうかという点となる。これについては会合後に発表された声明で、一段の利上げが正当化されるとの表現を維持しており、議長会見も予定されている12月のFOMCで利上げは実施されるであろうとの見方が強い。
11月末の米中首脳会議や英国のEU離脱などの行方も気掛かり材料となるものの、12月のFOMCでの利上げの可能性は現状高いようにみられる。しかし、それ以降の利上げについては当初予想されていたよりもペースダウンしてくる可能性がある。
11月16日にFRBのクラリダ副議長が米CNBCテレビのインタビューで、政策金利について「(景気を過熱も冷やしもしない)中立金利に近づいている」と述べた。リチャード・クラリダ氏は今年の9月にFRBの金融政策担当副議長に就任した。
FRBは2020年まで利上げを続けて政策金利を3.5%まで引き上げるシナリオを中心路線としている。ただ、当局者は景気を過熱させず冷やしもしない「中立金利」を3.0%と分析している。
FRB内には中立水準で利上げを停止すべきだという慎重論もあるが、その慎重論を唱えているのが、金融政策担当副議長のクラリダ氏となる。
10月25日の講演でも、「2019年に入って物価が安定したままなら、想定以上の利上げには反対する」と述べていた。利上げに積極的ともみられるパウエル議長に対して、クラリダはブレーキ役となっているようにも見える。
来年の米国の経済物価情勢がどうなるのかは見通しは難しい。これまでのようにFRBにとり、順調に利上げが継続できるのかはファンダメンタルズなど次第の面もある。これまでのような好環境が続くと予想するよりも、景気そのものがペースダウンする可能性の方が高いようにも思われる。ここにきての原油価格の下落傾向などもそれを示唆しているのではなかろうか。
そうであれば、12月の利上げを含めて、あと4回程度の利上げで、政策金利を中立金利程度にしたところで、打ち止めとなる可能性も意識しておく必要があるのではなかろうか。またもし、何かしらのショックが起きれば、その時点で正常化にむけた利上げが停止する可能性もありうる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年11月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。