英国のEU離脱を巡る協議の進捗状況やイタリアの2019年予算を巡るEUとの対立の行方に変化の兆しが見え始めた。
欧州理事会(EU首脳会議)のドナルド・トゥスク常任議長は11月25日、臨時招集した欧州理事会において、英国のEU離脱(ブレグジット)問題に関する離脱協定草案について承認したと発表した。
この離脱協定の鍵となっていたのが、英国とアイルランドとの国境の厳格な管理を避ける「バックストップ」(安全策)とされている。結局、英国のメイ政権が14日に了承した離脱協定案は、英・EUの将来の関係が固まるまで、北アイルランドだけでなく英国全体が関税同盟に残留する方針が盛り込まれた。2020年末までの移行期間中にアイルランド国境問題で合意できなくても、関税ゼロなど英・EU間の現状の通商関係を保つ内容となる(15日付け日経新聞)。
今後は同協定を英国議会が承認するかどうかが焦点となる。英国議会が承認すれば、来年の欧州議会で承認される見通しとなっているようである。ただし、いまのところ、英国下院での賛成派は少数のようで、支持が得られるかどうかはいまのところかなり不透明となっている。
ブルームバーグによると、欧州連合(EU)が臨時首脳会議で正式決定した英国との離脱協定案と政治宣言案を巡り、英議会の承認を得るための採決が12月11日に実施されることが決まったそうである。
そして、イタリアのサルビーニ副首相(連立与党、同盟の党首)は2019年財政赤字目標の見直しに寛容な姿勢を示唆した。イタリアが修正に応じれば、欧州連合(EU)による制裁発動を回避するための協議が進展する可能性がある。
欧州委は21日、イタリアの予算案がユーロ圏の財政規律を順守していないとして、是正措置を求める過剰財政赤字是正手続き(EDP)に入ることを勧告した。ユンケル欧州委員長は24日にイタリアのコンテ首相と予算案について協議し、ユンケル委員長はこの協議で、EDP入りを回避したいならば、財政赤字目標を少なくとも0.3~0.4ポイント引き下げるように政府を説得することをコンテ氏に求めたとされている(26日付け朝日新聞)。
英国のブレグジット問題については最終障壁となる英国議会で承認されるかどうかという問題はあるものの、可能性も多少なり開けてきた。
そして、イタリアの予算案の問題についても、イタリア政府がさすがに妥協し始めてきたといえる。とはいえ政権内での意見を集約できるのか、不透明感は残る。しかし、それでも欧州を巡るリスクがこれで幾分か後退したようにも思える。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年11月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。