こんにちは、東京都議会議員(町田市選出) おくざわ高広です。
「国による税収奪に断固反対!」として、現状を振り返る編、行政改革が第一歩編を書いてきましたが、今回は、ラスト東京都が果たすべき役割編です。
これまでの大まかな流れ
・国による税の偏在是正措置により、東京都の税収から年間1兆円近い税が奪われるとの報道。
・来年度の税制改正に向け、与党税制調査会が本格的にスタートしており、来月中旬には与党税制改正大綱が取りまとめられる。
・東京都は、「東京都から地方への税源移転は国全体の成長を阻害するものであり、真の地方創生、地方分権に向けた抜本的な税制改正が必要である」として、あらゆる機会を捉え、国の方針に反対。
・私が、都議会議員としてできることは、地方の皆様にも「偏在是正措置はせずに、東京に集積させようじゃないか」と思っていただけるように都政改革(特に行政改革)を進め、信頼を高めること。
・12月の定例会には、災害対策に関する補正予算92億円が上程される予定であり、ビルド&ビルド&ビルド・・・とならぬよう、スクラップの提案もしていかなければならないと考えている。
ここからが今回の主張
前回ブログの締めで、課題解決のトップランナーとして、イノベーション創出の発信地として、全国の災害対策基地として、東京都が担う本来の役割を果たすことが重要である旨を書きました。漠然としたアイディアベースのものもありますが、東京都の果たすべき役割を3点にまとめたいと思います。
1.課題解決のトップランナーとして
東京都は、世界に類を見ない速度で少子高齢化が進むことが予想されており、2035年には4人に1人が高齢者、2060年には3人に1人が高齢者になると推計されています。医療や介護分野の人材不足は益々顕著になり、また、地域の繋がりも薄れていく事が予想されます。東京都では、「超高齢社会における東京のあり方懇談会」という有識者会議が開かれ、「TOKYO BEYOND 2020~世界に先駆ける長寿社会」という政策提言がなされました。現在、この政策提言をいかにして具体的な事業に落とし込んでいくかという検討がなされているようですが、この政策提言を東京だけのものと捉えてはいけません。
少子高齢化に代表される全国共通の課題について、東京都が先進的な取り組みを実践し、全国各地に対して、ノウハウを共有し、失敗も成功も含めたエビデンスを提供していくことが肝要です。例えば、ICTの利活用について、東京都が率先して取り組むことでシステムを構築し、より安価に、より安全に地方で導入いただける道筋を描くことが挙げられます。あるいは、ソーシャル・インパクト・ボンド(※1)などの新たな仕組みを導入することも意義深いと考えます。
11月18日の読売新聞広告には、イー・ウーマン社長の佐々木かをりさんのコメントが掲載されていますので、ご紹介します。
「行政手続きをインターネットで一括して行うeガバメントや医療のデジタル化では、各自治体で違うシステムを使っていることがある。都がしっかり投資をして基本をつくり、その仕組みを地方が活用できれば、各自治体は投資を小さくできる。」
しかし、ICT利活用に積極的なつくば市やSIBを日本で初めて導入した神戸市などの後塵を拝しているのが東京都の現状です。民間出身の議員が多数在籍する都民ファーストの会の強みを発揮し、都政をモデルチェンジしていかなければなりません。
2.イノベーション創出の発信地として
イノベーションというと、技術革新だけを思い描いてしまう方も少なくないと思いますが、もともとは、1911年に、オーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって、初めて定義された概念で、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」です。新結合、というのが大きなポイントであり、0から1を生み出すというよりは、1と1を組み合わせて3や4を作り出していくものであると、私は捉えています。
東京都には、ヒト・モノ・カネ・情報が集まっていると言われますが、同様に課題も集積している場所であり、課題解決のためのイノベーション(新しい結びつき)が起こりやすい環境にあります。国家戦略特区制度やサンドボックス制度(※2)を活用し、積極的な規制緩和を進め、AI(人工知能)やロボット、ドローン、自動運転、フィンテック、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)などの先進的な技術を社会に組み込んでいくために、積極的な投資をすべきです。
例えば、自動運転について、先日試乗会に参加してきましたが、大手町~六本木の公道を快適にドライブすることができました。人手不足からバスやタクシーを走らせることができない地域にとって、画期的な解決策になりえると確信しました。都内の課題解決に積極的に投資することが、自ずと地方の課題解決へと繋がる好事例だと思います。
また、本年度から創薬系ベンチャー育成支援事業「Blockbuster TOKYO」が開始されました。2017年に経済産業省が発表した資料によりますと、2016年に米国食品医薬品局で新規に承認された医薬品20個のうち、大手企業によるものは5個、ベンチャー企業によるものは15個となっていますが、日本企業が開発したものは1つも含まれていないそうです。これまで、研究とビジネスが連動しにくい環境下にあった日本ですが、東京都が率先して創薬兼ベンチャー支援に乗り出したことには大きな価値があると考えています。
地方から、東京に投資したいと思ってもらえるような取り組みを進めていく必要があります。
3.全国の災害対策基地として
1370万人が暮らし、今後30年以内に70%以上の確率で首都直下地震が起こると言われる東京都においては、災害への備えは最優先課題の一つです。東京都では、様々な災害対策を進めていますが、中でも水や食料の備蓄、防災人材の育成を進めることは、地方で災害が起きた際の対策にも繋がるものと考えます。厳しい財政状況の自治体にとっては、水や食料の備蓄を最低限にとどめ、災害発生後即座に東京都から救援物資が届くと分かっていれば、これほど心強いことはないと思います。
また、今年9月の北海道東部胆振地震では、市役所の電源が確保できない事案が発生したことなどを受け、東京都では、区市町村庁舎の非常用電源の整備を促進する補助制度を創設したところですが、非常用電源は1基1億円を超えるものがほとんどで、財政状況の厳しい自治体では、整備が進んでいない現状も指摘されています。現在は、東京都でも配備していませんが、移動用電源車を都が保有しておき、災害発生時に地方へ派遣できるような仕組みを整えておくことも検討の価値があると考えます。
そして、東京都で育成した防災ボランティアやノウハウを持った都庁職員が派遣され、復旧・復興を支えることができるよう、全国の災害対策基地になることも期待されます。東京都で進める災害対策が、いつどこで起こるか分からない全国の災害への備えとなるという視点をもって、防災施策を進めていくことが必要であると考えています。
※なお、上述の3機能の拠点は、地方と課題を同じくする部分が多い、多摩地区に設置すべきと考えています。全国各地からプロジェクトチームのような形で官民問わず、人材が結集する場所が作れたらいいなと思い描いています。(仮称)都庁第三庁舎誘致構想(と勝手に呼んでいます。)
このように、東京都が果たすべき役割を明確に打ち出し、国による税の偏在是正措置がいかに合理的でないかを、全国の皆様にご理解いただかなければなりません。都民ファーストの会は、東京都の地域政党であり、国会議員や地方議員のコネクションがありません。
しかし、それを悲観する必要はなく、しがらみが無いからこそ、東京都の果たすべき役割を純粋に追求していけるともいえます。残された時間はわずかですが、できる限りの発信を続けるとともに、具体的な政策提言をしていく所存です。もし、この投稿に共感いただける方がいらっしゃいましたら、シェア頂いたり、ご友人にお話しいただけましたら幸いです。
※1 ソーシャル・インパクト・ボンドとは、2010年にイギリスで始まった官民連携手法であり、従来公共事業として行われていた事業に民間資金や民間団体の知見・ノウハウを活用して効率的・効果的なサービス提供を行い、行政はその事業成果等を原資に成果報酬を資金提供者に支払う手法。ソーシャル・インパクト・ボンドにおける事業成果とは、主に将来の行政負担の軽減を中心とする社会的コストの効率化を指す。
※2 サンドボックス制度とは、現行法では想定していない革新的技術の実用化の際に、様々な規制が足かせになります。子供が自由に砂遊びをするように、企業が制約にとらわれずに試行錯誤することで、革新的技術・サービスを事業化を促進するために、地域限定や期間限定で現行法の規制を一時的に停止する制度。
編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、都民ファーストの会)のブログ2018年11月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログ『「聴く」から始まる「東京大改革」』をご覧ください。