欧州中央銀行(ECB)は13日の政策理事会において、主要政策金利を据え置くと同時に、4年近くに及んだ2兆6000億ユーロ規模の量的緩和(QE)を終了させることを正式に決定した。ECBも非常時の緩和策から平時の緩和策に戻す、いわゆる正常化に向けた一歩を進めた。
保有債券の満期償還金の再投資についてのガイダンスを変更し、「政策金利引き上げの開始後も長期にわたり続ける」とした。その政策金利については、少なくとも2019年夏の終わりまで据え置くとした。
市場では保有債券の償還金の再投資についてのガイダンス変更を好感し、外為市場でユーロが買われ、周辺国の国債が買われるなどした。
本来であれば、膨らみすぎたECBの保有資産を減少させていくべきと思うが、正常化に向けた動きはかなり慎重に行ってくるものとみられ、巨額の保有資産を維持させることで、いわゆるストック効果を協調した動きとみられる。
今後の利上げについては「少なくとも2019年夏の終わりまで据え置く」との表現を後退させるかなとみていたが、これはそのまま据え置いた。
ドラギ総裁は会見で「ユーロ圏経済の成長見通しを巡るリスクは、おおむね均衡していると引き続き判断することができる」と指摘していたものの、「しかし、地政学的要因を巡る先行き不透明性が払しょくされないこと、保護主義の脅威、新興国市場の脆弱性、金融市場のボラティリティーを踏まえると、リスクのバランスは下向きに傾きつつある」と述べた(ロイター)。
これをみても今後の利上げについては、かなり慎重に行うであろうことが予想される。たしかに夏まで動かさないとしていることで、半年以上も先であり、いろいろと状況が変化している可能性はある。むろん景気後退リスクも大きいとみられるものの、それほど落ち込みがないという可能性もある。利上げについては現状は行うつもりはあっても、白紙状態ともいえるのではなかろうか。
これでFRBやイングランド銀行などに続いてECBも正常化に向けて歩みを進めてきた。これに対して、いっこうに物価目標の達成の見込みのない日銀は、正常化という言葉を封印しているかにみえる。現実には買い入れる国債の量など減らしているものの、ETFの買入などは年6兆円を超えるなど、何故いまだにそんなことをしてるの状態にある。頑なな姿勢をなんとか打破しないと、今後の金融経済を取り巻く環境の変化に対応できなくなるリスクが出てこよう。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。