こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
本日はクラウドファンディング支援者からのリクエスト記事です。いただいたテーマは『財政再建の本丸「医療費削減」は可能か』。
ちょうど年末年始にかけて、古市憲寿さんと落合陽一さんが終末医療を中心とした医療費削減について対談を行い、いわゆる「炎上状態」になったことが話題となりました。
落合陽一×古市憲寿「平成の次」を語る #2 「テクノロジーは医療問題を解決できるか」
とりわけ「安楽死」の部分を医療コストと結びつけて論じたことに異論が噴出し、落合陽一さんは後日、自身のnoteにて謝罪と一部の訂正を発表しています。
確かにコスト削減からの文脈で安楽死という極めてセンシティブな課題へと放談が流れていったので、不適切との意見が出るのはやむを得なかったと思いますし、御本人もその部分は認めて謝罪をしています。
しかしながら一方で、この対談内容のすべてが否定されるものではありません。
https://t.co/NbEAirLi42
「後期高齢者の医療費を2割負担」と「終末期医療の延命治療を保険適用外」これについては様々な方のご指摘の上,反省し撤回しています. https://t.co/22NeAo4KeV— 落合陽一 (@ochyai) 2019年1月4日
特に、落合氏本人は「結論を出すには時期尚早」として撤回されたものの、「後期高齢者の自己負担増」こそ政策的に実現可能&早急に手をつけるべきことだと私は考えています。
終末医療のコストについては、医療関係者や有識者からすでに指摘が入っている通り、確かにコスト増との因果関係がまだ不明だと思いますので、ここでは置いておきます。
やはり医療費負担の問題を論じる本丸は、後期高齢者の自己負担増です。
(出典:厚労省)
今後の後期高齢者の総人口における割合、医療における患者数増加は火を見るより明らかであり、このコストを圧縮しない限り我が国の社会保障制度に永続性はありません。
最近は「予防医療によって、医療費を削減することができる!(後期高齢者の負担は増やさなくてもOK!)」という論調がある種のトレンドになっているものの、残念ながら現時点で予防医療によって総医療費が抑制できるというエビデンスはないですし、むしろ寿命が伸びることによるコスト増の可能性すら指摘されています。
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そもそも「年齢」というファクターで社会負担の多寡を決めるのは、今の時代には極めて不適切ではないか?という問題提起は、私自身何度も行ってきたところです。
実際、内閣府などの統計によると日本の金融資産の6割以上は高齢者が所有しており、現在の我が国は「貧しい若者から富める高齢者へ」逆再配分が行われている状況です(もちろん、富裕層ではない高齢者へのセーフティーネットは必要・重要であることは論を待ちません)。
実際にチーム小泉進次郎が社会保障制度改革に挑む姿を描くノンフィクション「人生百年時代の国家戦略」の中でも、最終的な「こども保険」というアイディアにたどり着く前に、一人の議員が「(社会保障制度の見直しは)医療費に手を付ければ良い」と強く進言する場面が出てきます。
政治的ハードルの高さなどから、結論としては「こども保険」というアイディアに行き着いてしまったわけですが、私は与党の若手こそこの「ハードル」に正面から立ち向かって欲しかったと率直に感じています。
確かに高齢者の圧倒的多数は、医療費負担の引き上げに反対でしょう。しかしながら実際に政治活動を続ける肌感覚では、1割から2割の高齢者は、持続可能性や世代間格差是正に理解を示しているように思います。
【更新】音喜多駿・東京都議が新党立ち上げ。若い世代と「1割の理解ある高齢者」で統一地方選に挑む|BUSINESS INSIDER
上記のインタビューでも答えたように、「若者+理解のある1割の高齢者」の支持を集める政党が勢力を拡大していけば、こうした医療費問題のタブーも動かせるのではないかと感じています。
しかしその際には、優先順位を見極めて改革のリソースを集中していくことが必要です。終末医療や安楽死も大事な政策課題でありつつ、まずは後期高齢者の医療費負担。
こちらに議論のリソースを割いていくことがポイントではないかと考える次第です。
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地方議員である私は、抜本的な医療制度などに政策提言をできる機会は残念ながらありません。
上記のような政治的な考えを展開しつつ、まずは地方自治体から医療費の抑制・高齢者の健やかな生活を保障する体制をつくるべく、尽力していきたいと思います。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、あたらしい党代表、東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出)のブログ2019年1月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。