日本で浸透中のグレイヘア、米国でも大流行の兆し

安田 佐和子

日本では、元アナウンサーである近藤サトに代表される白髪染めをしない自然なグレイヘアが浸透しつつあるようですね。

実は米国でも、グレイヘアが流行の兆しをみせているのですよ。

その歴史も、決して浅くはありません。米国でグレイヘアがファッション・アイコンとして異彩を放ったのは、全米で2006年に公開された映画「プラダを着た悪魔」でしょう。メリル・ストリープ演じるファッション誌の鬼編集長が輝かせたグレイヘアは、観る者の心を奪ったものです。もう一つ、ファッショニスタに鮮烈なインパクトを焼印のように残したのが2015年セリーヌの広告です。モデルに起用されたのは当時80歳の大台に乗ったばかりの小説家ジョーン・ディディオンで、サラサラとなびかせたグレイヘアと圧倒的な存在感は、世の女性に憧れを抱かせました。

そして、現在。第76回ゴールデン・グローブ賞では主演女優賞こそ獲得できなかったものの、主題歌部門で受賞したレディ・ガガはグレイヘアでステージに上がりました。その他のケイティ・ペリーやアリアナ・グランデなど錚々たる歌姫も近年、ミュージック・ビデオやライブで、銀髪をロックさせています。遂には、20代の読者層で知られるGLAMOUR誌をはじめ、染め方を伝授するページも増えてきました。

ちなみに英語で、銀髪ファッショニスタを老若男女問わずsilver foxと呼びます。

(出所:GLAMOUR)

もちろん、白髪染めに辟易して自然な髪色を楽しむ年配の女性も増加中のようです。FOXニュースも取り上げるほどで、人気の広がりを感じさせますね。

こんな統計もございます。美容業界誌サロン・トゥデーによれば、美容サロン(スキンケア、ネイルサロンを含む)の売上高は2017年に前年比1.8%増の51.6億ドルで、増加率は少なくとも2012年以降で最低でした。美容サロンのサービスにサロンでの商品販売と合わせても、売上高は2%増の630億ドルと小幅な伸びにとどまります。発表元の Professional Consultants & Resourcesのサイラス・ブルサラ氏によれば、顧客がサロンからアマゾンなどオンラインへの購入先をシフトさせているほか、サロンの集客数の減少、加えて白髪染めからの卒業を挙げていました。

(作成:My Big Apple NY)

男性の場合はどうでしょうか?ロマンスグレーと言えばジョージ・クルーニーを思い出す方が多いでしょう。最近では、皆様ご存知のこの方もシルバー・フォックスの仲間入りをしました。

そう、あのポール・マッカートニーです。御年76歳で、白髪染めにサヨナラし英国で大いに話題となりました。世界最大の恋活・婚活サイト大手マッチ・ドットコムによれば、会員女性の72%がグレイヘアの男性を「セクシー」と評価していました。日本で「枯れ専」との言葉が存在するように、アメリカの女性の間で銀髪の男性は一定の人気を誇るようです。高齢化に加え、プラチナ・ブロンドが認知されるアメリカでは、日本より「Silver is the new black—銀髪こそ、新たなトレンド」が定着するのは早いかもしれませんね。

(カバー写真:Dijon Bowden/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年1月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。