テレ東『デザイナー渋井直人の休日』は警鐘を乱打する 独身社会の生き方

テレ東のドラマ『デザイナー 渋井直人の休日』が面白い。なんせ、原作は今をときめく渋谷直角である。

ここ数年『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』(扶桑社)がスマッシュヒットしたし、なんせ『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(扶桑社)は映画化され、妻夫木聡、水原希子が出演した。今回ドラマ化されたこの作品は、一昨年、単行本が出たのだが、居ても立っても居られず購入し、夫婦で笑い転げた。その時の感動は、この記事にまとめてある。

BRUTUSを愛読、こだわりの中古車… オシャレのつもりが残念な目で見られている「痛い中年」たち – SankeiBiz(サンケイビズ)

主人公の50代独身デザイナー渋井直人の日常を描いたコメディだ。出版、デザインクラスタのあるある話、中年の悲哀、背伸びしたオシャレ親父の日常が描かれる。50代にもなって世渡りが下手であること、お人好しのようで頑固者であること、いかにも『BRUTUS』や『Pen』や『モノ・マガジン』から影響を受けたような生活を送っていたりする点が笑える。

原作も相当面白かったのだが、今回は、主役が名バイプレイヤーの光石研だ。面白くないわけがない。編集者役の夏帆もハマり役だ。超絶美人敏腕編集者として知られる幻冬舎の竹村優子さんがモデルではないかと、業界では早くも噂になっているが、たしかに初めて会った頃の彼女にそっくりだ。なお渋井直人のアシスタントを演じる岡山天音は『貴族探偵』で常見刑事を演じている。常見業界としては嬉しい。

これまで2話が放映されたが、いやあ、原作を実に上手く再現しつつ、ドラマならではの広がりを見せている。原作よりも、オシャレ生活度が増しているように思う。主人公の部屋などは、まるで『Casa BRUTUS』のページのようである。というか、キッチンのすぐ隣りにDJブースがある家なんか、あるか?

もっとも、彼の生活を見ていると複雑な心境になる。彼は豊かな暮らしをおくっているし、仲が良いかどうかは別として仕事仲間がいるし、なんせ、仕事がある。今後、ロスジェネが50代になっていくが、この渋井直人は相当な勝ち組に見える。豊かだけど、痛い生活はフィクションであるがゆえに面白いのであって、現実の50代単身者の生活はこうは上手くいかないのではないかと視聴者もうすうす気づいているのではないか。

また、コミュニケーションが苦手な人の受難、生き辛さも暗に描かれているように思う。幸せな単身高齢社会などやってくるのか?この作品は人々を楽しませつつも、警鐘を乱打しているのである。

まさに、無子高齢化社会というわけだ。著者と私との対談も載っているこの本を手にとってほしい。

しかし、先日、娘とデパートに行ったときに、一人で思わず自撮りしたが・・・。私も独身だったら、このドラマの主人公、渋井直人のようになったのだろうなと思った次第だ。『BRUTUS』『POPEYE』『Pen』『Casa Brutus』を愛読し、デパ地下や成城石井、北野エースあたりで買い物をしてカフェ飯っぽい料理をつくり、ちょっと変わったコダワリの服をキメる中年って、まさに私じゃないか。やれやれ。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年1月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。