毎日読んでしまう「桁外れにつまらない」石原邦夫氏の私の履歴書

内藤 忍

日本経済新聞の名物コーナー「私の履歴書」を現在執筆しているのは、東京海上日動火災元社長の石原邦夫氏(写真も同紙電子版から)です。この連載が「桁外れにつまらない」と一橋ビジネススクール教授の楠木健氏がプレジデントオンラインのコラムに取り上げていました。

日本経済新聞電子版から

確かに、石原氏の連載は普通の人の日記を読むような平坦な内容。優秀な経営者であることは良く分かりますが、読んでいてドキドキ、ハラハラする内容ではありません。

ビジネスパーソンが私の履歴書を執筆する場合、大きく2つの成功者が登場します。

1つは起業家として、ゼロからビジネスを立ち上げ成功した人たちです。

そしてもう1つは、役所や大企業に入り、サラリーマンとして出世して、トップに上り詰めて名を残したパターンです。

ストーリーとして、どちらが面白いかと言えば圧倒的に前者です。

起業家は小さな会社から事業を成長させ、様々な苦難を乗り越え、世の中に新しい価値を提供しています。波瀾万丈なストーリーはテレビドラマ以上にワクワクさせられてしまうのです。

例えば、ニトリホールディングス社長の似鳥昭雄氏の連載は、書籍化される位ユニークな内容で、私もあまりの面白さにブログで取り上げたほどです。

逆に、役人や大手企業の経営者の執筆したものは、面白みがありません。東京大学を卒業し、真面目に仕事をして、社内で頭角を現し、出世してトップに就任。どこにでもあるような平坦な人生で、敢えて語るような面白いエピソードもありません。

石原氏の今回の執筆は、このような大手企業のトップの典型的なパターンの究極ともいえます。

しかし、考えてみれば、保険会社のトップとしての使命は、起業家のように波瀾万丈に生きることではありません、できる限りリスクを最小化し、安定した企業経営を続け、顧客に安心を届けることです。保険会社のトップが、ヤミ米の配達やカンニングをして、会社で花札のギャンブルをしていたら、大問題になってしまいます。

その意味で、石原氏は保険ビジネスの経営者として、極めて優秀であることをこの連載で示したともいえます。

これだけつまらないと酷評された連載ですが、私は相変わらず毎日読んでしまいます。その理由は、安定した人生の中に誠実で温かいお人柄が滲んでいるのを感じるからかもしれません。

きっと、お会いしてお話したら、極めて魅力的で、面白い方のような気がします。

石原氏の連載は、明日が最終日。「桁外れにつまらない」内容に終わりそうだと、今から何となく想像がつきます(笑)。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年1月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。