今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、以下のエントリーがSNSで話題となりました。
【参考リンク】海外と日本の就職活動の歴然とした差を実感。海外大博士から見た就職活動
要約すると、ケンブリッジで博士号取得した日本人の篠原氏が日本で就職活動した際の、日系大手企業と外資系企業それぞれの採用スタイルの違いがあまりにも凄すぎて言葉を失ったという話ですね。
ケンブリッジの院生に「TOEICは何点?」って聞いたり、初任給が奨学金以下だったり、博士号持っているのに配属先がわからなかったりと日本企業のガラパゴスぶりがこれでもかというほどに赤裸々にさらされます。
日本企業の採用がこういう残念なノリなのは、いつも言っているように終身雇用制度前提で新卒一括採用するためです。
年功賃金だから、初任給は一律の一番安い水準からスタートする。雇用を保証される代わりに会社都合でなんでもこなす総合職として就社するため、配属先は確約不可能。重要なのは専門性より“ポテンシャル”であって、それを判断するのは事業部ではなく「人を扱いなれている」人事部である……etc
就活ルール見直しを見ても明らかなように今は過渡期ではありますが、基本は上記のような流れで独特の新卒一括採用が続けられているわけです。
先に苦労しとくか、後で苦労するか
一方で、世の中にはこんな意見もあります。
「学生がポテンシャルだけで正社員にしてもらえる新卒一括採用は、日本が世界に誇れるシステムだ」
確かに、海外のように自身のキャリアを学生のうちにしっかり見据えた上で長期のインターンをいくつも経験し、ジョブディスクリプションに見合った人材として自分を売り込むより、のほほんとポテンシャル重視で正社員身分に入れてもらった方が学生は楽でしょうね。
でも、筆者の経験で言うと、そうやって会社都合で与えられる業務をぐるぐる回ってきた人間というのは、20年経過すると往々にして「社内政治は詳しいけど外のことは全く知らないし、外に出たいとも思わない」人材になります。
ま、それでも会社がいけいけドンドンならいいんでしょうが、ひとたび事業が傾いたりすれば配置転換や早期退職のターゲットとされ、会社から「いい年して、何でこんなこともわからないんだ」「言われたことだけやってればいい時代じゃないんだぞ」と詰められることになります。
もちろん、そこで踏ん張って軌道修正できる人も、中にはいます。でもそれだったら柔軟性も伸びしろも多い20代の頃にいっぱい汗かいて伸びしろを伸ばせるだけ伸ばしておいて、それで40代以降はその時伸ばした伸びしろを軸足に勝負した方が、長い目で見れば楽ちんだと筆者は考えますね。
はっきり言って、一番伸び盛りの20代に楽することを薦めるのは、40歳以降に袋小路に追い込んで会社と一心同体化させ、滅私奉公させる昭和的発想だというのが筆者のスタンスです。
ついでに言えば、新卒一括採用は社会全体でも大きな損失があります。冒頭で氏が衝撃を受けたような2極化した採用アプローチを前にして、普通の学生はどういう選択をするでしょうか。
少なくない数の若者は、「新卒一括採用は若者に優しいんだ」論に甘えて努力しないでポテンシャル採用してもらうコースを選ぶでしょう。そして、氏のようにきちんと努力した人材は、日本企業ではなくきっちり自身を評価してくれる外資を選択するでしょう。
高等教育に多額の税金が投じられている中で、あんまり勉強してない人が自国企業の門戸を叩き、努力した人が外国や外資に流れるという国に、はたして明るい未来は存在するんでしょうか。何だか知らないけど国力も特許も論文数もじりじりと下がり続けている根っこには、予算にくわえてこうした問題の影響が大きいように思えます。
【参考リンク】日本の科学研究はなぜ大失速したか 〜今や先進国で最低の論文競争力
以降、
そもそも人事はどこまで適性判断できるか
専門職と総合職の間で決定的な格差が開く
Q:「新・脱社畜サロンとかどうですか?」
→A:「過労死してしまいます」
Q:「定時後に仕事振ってくるアホ上司、何とかなりませんかね」
→A:「そういうのが古き良き管理職だと思ってるのがいるんですよ」
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- フリーターから正社員への動き拡大、ただし……
- 景気回復の実感がないワケ
- あんたさんざん終身雇用バンザイ!してきたじゃないか(笑)
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2019年2月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。